右は打率.184、左は.282なのに… 藤本監督が狙った他球団と“真逆”のエンス対策

ソフトバンク・藤本博史監督【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・藤本博史監督【写真:藤浦一都】

他球団と真逆の傾向が出ていたソフトバンクの右打者と左打者

■ソフトバンク 7ー5 西武(12日・PayPayドーム)

 12日に本拠地PayPayドームで行われた西武戦に7-5で競り勝った首位のソフトバンク。3回に今宮の適時打、デスパイネの2ランで一挙4得点、5回にも正木のソロ本塁打で1点を追加し、ここまで既に10勝をマークしていた西武先発エンスの早い段階での攻略に成功した。そのままなんとか逃げ切って2連勝。西武、オリックスに1ゲーム差をつけて、大混戦から一歩抜け出した。

 エンス攻略の鍵は他球団と“真逆”を突く選手起用にあった。3回1死二、三塁で今宮が3ボールから中前へ2点適時打を放って逆転に成功。さらに2死となってからデスパイネが左翼スタンドへ10号2ランを放った。4回にはスタメンに抜擢された正木が右翼スタンドへソロ本塁打。中盤までにエンスから奪った5点は全て右打者のバットから生まれたものだった。

 この日、藤本博史監督は3番に今宮を据え、7番には不調のグラシアル、そして8番にはルーキーの正木を、1軍で初となる一塁手として起用した。柳田や牧原大ら主力に左打者が多い中で厚めに右打者を配したのだった。

 今季から加入したエンスの成績を見ると対右打者に対して被打率.184だったのに対し、対左打者は.282。これを見ると、左打者を起用するのが正解のように映る。ただ、対ソフトバンクに限れば、これが真逆に。左打者の.222に対して、右打者は.290。打席数は少ないながら、藤本監督も試合前に「全体的に見たら左の方が打ってるんよね。でも、ウチは右の方が打ってるんよね」と語っていた。

 前回の対戦では6回無失点と抑え込まれていた難敵の左腕を“データ通り”に右打者たちで攻略。さらに「西武打線は外野フライが多いだろうから守備範囲的にグラシアル、正木、柳田だったら狭くなる。外野守備の村松コーチと話をして、正木をファーストにして、牧原(大)をセンターにした方が外野は締まるんじゃないか」と、1軍では初めて一塁を守った正木の起用も当たった。

 その一方で投手起用には誤算もあった。4点差で迎えた8回はセットアッパーの藤井ではなく、泉を4番手で投入した。前日、厳しい状況で26球を投げていた藤井を「今日はできるだけ休ませたかった」という意図からだった。だが、泉が先頭のオグレディに四球を与えると、栗山に二塁打、呉に適時打を浴びて、1死も奪えずに降板。休ませたかった藤井を投入せざるを得なくなった。

 ただ、藤井は平沼に犠飛こそ許したものの、若林、源田と連続三振に斬ってリードを守り、守護神のモイネロに繋いだ。もともとモイネロは登板予定だったため、ここは想定通り。指揮官は「藤井はしっかり投げてくれた。素晴らしいピッチングだった。藤井を使わなくちゃいけない、それだけ西武打線が粘り強いということ」とも語っていた。

 誤算こそあれ、大事な西武との3連戦初戦を勝ったソフトバンク。狙い通りの右打者起用で掴んだ1勝に藤本監督も「大きいですね」とうなずいていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)