「『コロナだから負けてもしょうがないよな』という空気にはしたくない」
21日に本拠地PayPayドームで行われた日本ハム戦に5-1で勝利し、同一カード3連勝を飾ったソフトバンク。周東、牧原大、田中正が新型コロナウイルスの影響で登録抹消となるなど、連日コロナ禍の影響を受ける緊急事態の中で、41歳のベテラン左腕・和田毅投手がチームを救う好投を見せた。
決して状態は良くなかった。初回に松本から右前打を許すなど、毎回のように走者を背負った。それでもゲームを作るのがベテランの技と経験か。5回に1点を失ったものの、リードを守り、中継ぎ陣にバトンを託した。5回1失点で今季4勝目を挙げた和田毅はお立ち台で「今日は嘉弥真と松本の代理としてここに来ました」と中継ぎ陣に感謝した。
チームは主力の多くが欠ける苦しい状況にある。そんな時だからこそ、気持ちを強く持つことが必要だと和田は言う。「こういう時だからこそ『コロナだから負けてもしょうがないよな』という空気にだけは絶対にしたくない。自分1人でどうにかなる問題ではないけれど、こういう時こそチーム一丸となって勝ち進んでいかないといけないと思う」。こんな思いを胸に、マウンド上で腕を振った。
2回に招いた1死一、三塁のピンチも、三ゴロ併殺打で切り抜けた。難しいバウンドをうまく処理したガルビスの好守が光り、和田も「自分の制球ミスをガルちゃん(ガルビス)がカバーしてくれた。あれがタイムリーになっていたらどうなったかわからないので本当に“ガルビスさまさま”です」。打線も代わって選手が結果を残し、守備では投手と野手が互いを助け合った。和田の言う通り“チーム一丸”が現れた一戦だった。
積み重ねてきた引き出しの多さも光った。この日は試合途中にプレートの立つ位置を一度変え、そして戻した。投手が試合途中に立ち位置を変え、さらに元に戻すことは珍しい。
「3回ですかね。自分が良くないって分かっていたので、ちょっとプレートを一塁側に変えて、何かキッカケじゃないですけど、フォームの何かをつかめたらいいなっていうのは自分でもあったので。投げながら、そこは考えながらやっていましたし、また戻したときには、良くはなっていた。一つのことにこだわりすぎないように、固執しないように。ここまで来たらゼロに抑えたらいいので。相手の目線とか視界も、変われば、多少変わることもある。そうやって打ち取っていかないといけないと思う」
4回になって、球速も最速147キロをマークした。前回登板だった8月14日のオリックス戦では4回途中6失点と立て直せなかったものの、この日は違った。試合中に試行錯誤し、修正して立て直してゲームを作り、役割を果たした。
5回66球を投げた段階でお役御免に。藤本博史監督が“5イニング限定”と語っており、和田も「体的にもちょっと張ってる部分もありましたし、自分も5回で交代だろうという気持ちでマウンドに上がっていたので」と言う。球数にかかわらず、5回までというのは予定通りだった。
シーズンも残り35試合。パ・リーグは首位から4位までが2.5ゲームにひしめく大混戦が続く。「何とかして打ち取ってやろうっていう気持ちが一番大事だと思う。綺麗に抑えようなんてね、今の時期はいらないと思っているので」と和田。どんな形であれ、勝つことが全て。大ベテランの言葉がチームのやるべき戦い方を言い表していた。
(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)