8日の2軍・阪神戦では自己最多の107球を投じた
チームを背負う投手になるべく、ファームで奮闘を続けているソフトバンクの田上奏大投手。さらなる成長のために日々、試行錯誤を繰り返している。8日に行われたウエスタン・リーグの阪神戦で先発すると、7回途中4失点で降板したものの、自己最多の107球を投じた。15日に行われた同リーグのオリックス戦では7回無失点。登板ごとに成長を感じさせている。
「スピードも出るようになってきていて、真っ直ぐで空振り三振も取れて。いいところもあった。でも、下位打線に打たれたのはめちゃくちゃもったいなかった」。8日の試合後に田上はそう振り返っていた。今季は2軍で“開幕投手”を任され、開幕2連勝を飾り、4月9日に支配下登録された。1軍でのデビュー戦ではファンにも鮮烈なインパクトを残し、将来を期待されている。
ただ、1軍での日々は想像を絶するほどの疲労があった。目まぐるしく変わる環境の変化もあり、心身の疲れは約1か月抜けなかった。2軍での再調整となった後も、なかなか勝ち星を掴めない日々が続いた。5月は先発登板した4試合で3敗。ウエスタン・リーグで今季3勝目を挙げられたのは、2勝目から約2か月半が経過した6月16日。自己最長となる7回を投げ抜き、無失点と光が差す貴重な白星となった。
今月8日の登板では今季5敗目を喫することになったが、田上自身は充実感を得ていた。「左バッターをどう抑えるか。先週も阪神に打たれたので、どうしたらいいのかなと考えての今日でした」。前回登板だった6月29日の阪神戦では5回7安打5失点。打たれた7安打のうち5安打が左打者から。痛感させられた課題をクリアするためにチャレンジを試みた。
「なんでもやってみないと分からない。経験しないとダメなんで」
「初球からフォークを使ったりとか、続けたりとか。前までやっていない配球をやってみました。1巡目、板山さんと高寺にヒットを打たれたけど、その後、木浪さんから空振り三振をとれました。フォークでゴロに打ち取れたり。こうやって打ち取れるんだというのが出来たというか、引き出し、武器が増えたかなと。そこは良かったかなと思います」。対左打者への攻め方で新たな学び、収穫があった。
先輩の九鬼隆平捕手とバッテリーを組んだが、この日は自らの意思を貫いた。「いつもは首とか振らないんですけど、今日は自分の投げたい球とか試したいことをやろうと思って、それが出来ました」。変化を求めて、先輩のサインに首を振ってでも自分の考えを試した。「失敗して学ぶこともあるので、やってみて初めて分かるというか。状態とか関係なく、なんでもやってみないと分からない。経験しないとダメなんで。今日、思い切って試すということは出来ました」。この日の充実感は、こういったところにもあった。
投手歴わずか半年でプロ入りした田上は、他の投手と比べて圧倒的に経験値が少ない。それは自身が一番理解している。だからこそ、たった1度の登板も無駄にはできない。打たれようとも、抑えようとも、1つ1つを糧にして、経験値を引き上げていかないといけない。成長するために失敗を恐れず、1試合1試合を実りあるものにするという覚悟。結果だけに拘らず、成長の場として挑めるファームで田上は着実に経験を積んでいる。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)