昨季は開幕スタメン全員が登録抹消を経験するも…
ホークスの強さの要因として、よく語られるのが「選手層の厚さ」である。開幕スタメンに名を連ねた全員が登録抹消を経験し、シーズンを“完走”した選手がいないという異例の1年間だったが、控え野手が奮闘。レギュラー不在の穴を埋める重要な働きを見せ、チームの日本一に貢献した。また水谷瞬外野手(現日本ハム)や大竹耕太郎投手(現阪神)をはじめ、ホークスでは花が咲かなかった選手が他球団で戦力化するケースも多く、これもホークスの選手層や控え選手のレベルの高さを物語っていると言える。
実際にホークスの選手層は他球団に比べて、どれほど厚いのだろうか。今回は特に昨季目立った野手の層の厚さを、「なんとなく」ではなくデータによって可視化してみたい。
まず、昨季の控え野手が実際にどれほどチームに貢献していたのだろうか。ここでは選手の総合的な貢献度を表すWAR(Wins Above Replacement)で見ていきたい。WARは、その選手の働きでどれだけチームの勝利を増やしたかを表している。目安としては控えレベルなら0、リーグ平均レベルの野手がフルシーズン出場すると2.0程度となる。つまりプラスの値を記録していれば、控え野手としては十分すぎる活躍と考えてもらえればよい。
以下の表1がホークスの昨季の主な控え野手のWARである。控え野手の定義は直近3シーズン連続で250打席以下の選手としている。
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続きの内容は
直近6年で他球団を引き離した「驚愕の貯金数」とは
10球団がマイナスの中でホークスが「圧倒的な理由」
「控え」から外れた大ブレーク選手の「本当の貢献度」
リストの最上位に名を連ねたのは川瀬晃内野手。昨季は内野の全ポジションをこなすなど、レギュラー陣が離脱した穴を埋めた。224打席に立ち、WARは1.4。控え選手レベルが0、平均レベルの選手がフルシーズン出場した場合が2.0であることを考えると、シーズン半分にも満たない打席数の中で1.4を記録する川瀬のパフォーマンスの高さがわかるのではないだろうか。データが示すのは、控え選手に一般的な球団のレギュラー格以上の選手がいるという事実だ。川瀬は過去3シーズンすべて250打席以下ながら、0.5→0.6→1.4と着実に上積みを作っており、ホークスの層の厚さを象徴する選手と言える。
ほかにはジーター・ダウンズ内野手、佐藤直樹外野手(現楽天)、谷川原健太捕手らが1.0以上のWARを記録。彼らはみな、他球団であればレギュラーを張っていてもおかしくないレベルである。海野隆司捕手の控えを務めた嶺井博希捕手もWAR0.8と、控え選手としては極めて贅沢なレベル。もちろん一部マイナスを記録している選手もいるが、ホークスの控え野手は印象だけでなく、実際に素晴らしい働きを見せていたことがわかる。やはりホークスの控えのレベルは高いのだ。
ちなみに、この14名のWARを合計すると4.8。他球団の控え選手のレベルを0と想定した場合、それに比べてホークスはチームの勝利を4.8勝分増やしている。これはつまり、チームの貯金を9.6個分増やしていることを意味する。昨季の日本ハムとの熾烈な優勝争いを考えると、この控え野手がつくった貯金9.6個が極めて大きな価値を持ったことは実感してもらえるだろう。
直近6シーズンで作った貯金はなんと「26」
さきほど見たように、ホークスの控え野手の出来は優れているように見える。では実際に他球団と比較すると、どれくらいの違いが出るのだろうか。「控え野手」についてさきほどと同様の条件で、2020~2025年に記録したWARを球団別に比較したものが以下の表だ。
まずは昨季から見ていこう。さきほども述べたとおり、ホークスの控え野手の昨季WARは4.8だった。これを他球団と比較するとどうだろうか。
2番目にWARが高かったのは日本ハム。しかし、パ・リーグ2位のチームですら値は1.1。3位のDeNAは0.7。どの球団もホークスには大きく及ばない。昨季だけを見ると、やはりホークスの控え野手の活躍が図抜けていた様子がわかる。他球団でこれほど主力が離脱すれば、取り返しのつかない状況になっていただろう。
ただし、この層の厚さは昨季だけの話ではない。過去を振り返ってWARを見ても、ホークスの控え野手の貢献度はすさまじい。2020年は2.2、2021年は0.8、2022年は4.9。2023年こそ-3.0に落ち込んだが、2024年は3.4。そして昨季は4.8。昨季に限らず、ホークスの控え野手はずっと高いレベルの貢献度を維持しているのだ。6シーズン合計の値は13.1。控え野手の貢献度だけで、6シーズンで「26」もの貯金を生み出したことになる。12球団2位の広島がわずか0.3で、残り10球団がマイナスの数値を記録していることからも、ホークスの圧倒的な選手層の厚さを感じられるのではないだろうか。
しかも、これはかなり定義を絞り込んだ「控え野手」だ。例えば昨季大ブレークを果たした野村勇内野手は、今宮健太内野手の故障によって出場が増えたという意味で「控え野手」とも言えるが、今回の集計には含まれていない。こういった広義の「控え野手」を含めると、他球団との差はより大きく広がるかもしれない。
控え野手の貢献度を測るのは難しい。いくら能力が高くても、出場しなければ能力を発揮する機会はない。ホークスは層の厚さゆえに、出番が与えられなかった選手が他球団で活躍することも多く、それを苦々しく思っているファンも多いはずだ。しかし多くの選手を保有して層を厚くする戦略は明確に他球団を引き離しており、常勝軍団の形成に大きな貢献を果たしている。今季についても主力が数人抜けた程度では、大きな穴にはならない可能性は十分にありそうだ。
[1]「控え野手」の定義は直近3シーズン連続で250打席以下の選手とした。
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する「1.02 Essence of Baseball」の運営、メールマガジン「1.02 Weekly Report」などを通じ野球界への提言を行っている。(https://1point02.jp/)も運営する。