1度はよぎった現役引退…もう1度信じる「自分の技術」 中村晃が“生涯ホークス”を誓う理由

インタビューに応じたソフトバンク・中村晃【写真:冨田成美】
インタビューに応じたソフトバンク・中村晃【写真:冨田成美】
目次
  1. プロ18年目の位置付け…苦笑いしながら「長いなって感じです」
  2. 明かした“美学”…他チームに目を向けない理由
  3. 再起を目指す新シーズンに挙げたキーワード

プロ18年目の位置付け…苦笑いしながら「長いなって感じです」

 鷹フルは中村晃外野手に新春特別インタビューを行いました。プロ18年目を迎える2025年。“生涯ホークス”を誓っている理由を、包み隠さずに語ってくれました。現役引退を「意識しない選手はいない」――。自分自身のキャリアを、どのように見つめているのでしょうか。

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 プロ18年目の位置付けを問われると、「わからないですね……。長いなって感じです。よくやってんなって。まさかここまでやるとは思わなかったです」と笑顔を見せた。帝京高から2007年ドラフト3位でプロ入りを果たした。2024年は101試合に出場して打率.221、0本塁打、16打点。「苦しいのは苦しいかもしれないですけど、勉強になったのが一番です」。ポジティブに捉えているところも中村晃らしい。

 昨年12月20日に契約更改交渉を行い、5000万円ダウンの1億円(金額は推定)でサインした。「しっかりとダウンしました。当然のことですし、また頑張っていい結果を出せるように頑張りたいと思います」と先を見つめる。一定の条件をクリアすれば自動的に契約が1年延長される変則的なオプションだったが、結果的には「条件を満たさなかったので、また新しく契約を結びました」と明かした。

 2022年オフの契約更改では、“生涯ホークス”について「僕はそのつもりでやっています」と意欲を口にした。今もFA権は所有したままだ。今の心境についても「まだ他でやりたいという感覚はないです」とキッパリ言い切った。チームへの愛着、そして自身の“美学”を語った。

明かした“美学”…他チームに目を向けない理由

「強いのが一番じゃないですか。強いチームの第一線でプレーをすることを、僕は目標にしてやってきたので。このチームじゃレギュラーを取れないから他のチームに行きたいという選手も、昔はいましたし。そういう話も聞いていました。でもせっかく入ったので、このチームでレギュラーを取って、いい野球人生にしたいっていうのがあった。だからその時と同じような感じですよ。他のチームに行くというのは、あまりないですね」

 当然、「『いらない』と言われたら話は別ですけど」と、未来のことは誰にもわからない。その上で、強さを追い求めることが中村晃の美学だ。「僕が入ってきた時から、もともとホークスは強かったですしね。選手である以上、勝つチームでやるのが一番いいことだと思います。すごいメンバーがいる中で、ここにどうやって入っていくんだっていうイメージもできないようなチームだったので」。18年前にプロ入りした時から、自分自身の信念は何も変わっていなかった。

「2軍にいたころは、『トレードに出してくれ』っていう選手もたくさんいました。でも、僕は『それは違うんじゃないかな』と思ってやっていたので」

 2019年に国内FA権を取得した。「もちろんホークスでやりたいと思っていましたし、同時に自分の価値を上げられるようにって意識もありました。もしFAするにしても、他球団が手を挙げてくれるような選手でありたいと思っていました」。移籍という選択肢よりも、選手としてどうレベルアップできるかに集中してきた。「同じ環境で慣れも出てくる。そこは難しいかもしれない」と話すが、福岡で過ごす17年間のキャリアが“不変の信念”を象徴していた。

インタビューに応じたソフトバンク・中村晃【写真:冨田成美】
インタビューに応じたソフトバンク・中村晃【写真:冨田成美】

再起を目指す新シーズンに挙げたキーワード

 2024年9月上旬、愛妻に「辞めようかなと思っている」と打ち明けた。それほどまでに苦しんだ1年だった。1度は本気で考えたことで、「現役引退」という選択肢がハッキリ見えたのは間違いない。ユニホームを脱ぐという覚悟は、自身の価値観に変化をもたらしたのか。中村晃は、首を横に振った。

「ここ2年、3年は常に、そういうのは頭の片隅にありますよね。30代の中盤にもなってきていますし。これでダメなら若い選手を使うし、他からも獲ってくる。そういう年齢ですし、意識しない選手はいないんじゃないかなと思いますけどね」

 再起を目指す今シーズン。キーワードに挙げたのは「技術」だった。ここ数年、自分自身に抱いていた、ある種の“疑い”。「あまり自信を持ってやっていない感じはあったので。野球もどんどん変わっていく。新しいものを取り入れないといけないっていう思いもあったんですけど、もう1度、自分はどういうバッターなのかを見つめ直して、やれたらいい」。静かにそう語った。18年目でプロ生活を絶対に終わらせない。覚悟を決めている中村晃なら必ず、新しい扉を開けられる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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