周東佑京は「口だけです」 引退の左腕が“ぶっちゃけ”…「95年会」の不思議な関係性

ソフトバンク・周東佑京(左)と渡邊佑樹【写真:冨田成美、竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京(左)と渡邊佑樹【写真:冨田成美、竹村岳】

渡邊佑が語る同学年「もう板ちゃんと佑京だけですね」

 昨季から今季までの2シーズンをソフトバンクでプレーした渡邊佑樹投手が現役引退を決断した。2017年ドラフト4位で楽天に入団。2022年オフに戦力外通告を受けたが、翌2023年からはホークスで育成選手としてプレーしてきた。2年間で支配下選手登録は掴めず、10月7日に自身3度目の戦力外通告を受けた。10月末にユニホームを脱ぐことを決めた左腕は“第2の人生”でサラリーマンの道を進む。

 7年間のプロ野球生活を終えた渡邊佑は「いろんな人に会って、様々な野球の考え方に触れられたので。自分の中でも良い経験になりました」とすっきりした表情を浮かべた。ホークスでの2年間を振り返る中で、脳裏に浮かんだのは同学年の存在だった。「同級生が結構多かったので。古川(侑利)とも、もう1度一緒にできましたし。楽天のころから一緒だったので、古川がホークスにいたのは心強かったです。いろんな人に会えたのが1番よかったなと思います」。移籍を経験して出会った人や、関わりが深まった人に感謝する。

 同学年は古川の他にも、周東佑京内野手、板東湧梧投手らがいる。「同級生が急にいなくなりましたからね。僕と古川と齊藤(大将)と鍬原(拓也)。去年、椎野(新)が辞めて、(上林)誠知と(高橋)礼もいなくなって……。もう板ちゃんと佑京だけですね」。寂しさを覚えながらも、同学年の仲間を口にする渡邊佑はどこか楽しそうだった。そして、明かしたのは“1995年会”の独特の関係性だった。

「同級生会とか、あまりしたことないですね」と語る渡邊佑。「仲悪いとかは全然ないです。会えば喋るし、『ご飯行こう』って佑京が言うんですけど、どうせ誰も企画しないんで。佑京は『同級生会やろうや』みたいに言うけど、多分実現はしないと思います。あいつは“口だけ”です(笑)」とぶっちゃけた。

“言い出しっぺ”の選手会長にチクリと苦言を呈した左腕だが、その表情は笑顔であふれていた。同じ場所に集まって言葉を交わすことだけが全てじゃない――。同じユニホームに袖を通し、共に戦った仲間たちは、どんな時でもかけがえのない存在だった。

 さらに、ホークスで生まれた“縁”もあった。「これまでも良くしてもらっていたんですけど、有原さんと一緒に野球をやることになるなんて思ってもいなかったです」。名前を挙げたのはチームのエース、有原航平投手だった。同じチームでプレーした経験があるわけでもなく、出身地も違う2人には意外なつながりがあった。

「ホークスに入る前の年から、僕は高梨(雄平)さんの自主トレでお世話になっていて。高梨さんと有原さんが早大の同級生で仲が良くて、それもあって喋ったことがあったんです。高梨さんの結婚式がちょうど僕がホークス来る前(2022年)の12月にあって、その時にも有原さんとお話していたんですよ。そしたら、その後に有原さんもホークス(入団)っていう報道が出て。『よろしくお願いします』って話をしたところでした」

 突然の“同期入団”となったことも嬉しかった。1軍で一緒にプレーすることは叶わなかったが、エース右腕にも何かと気にかけてもらったことにも感謝した。

 2年前に楽天から戦力外通告を受けた際にも引退を考えたが、オファーを受けてホークス入りした。「1年勝負」と覚悟を決めてやってきたが、結果的には2年間プレーした。その中で出会った、かけがえのない仲間たち。多くは語らないが、渡邊佑は感謝を込めた。「本当だったら一昨年で終わるつもりだった野球が、もう2年もできたので、よかったです。こういう結果になったけど、そこに悔いはないです。ここでやれることはしっかりやり切ったと思います」と力強く頷いた。

 野球に未練はない。「これから、こういう表舞台に立つことはほぼほぼないと思いますけど、新しい道で頑張っていきたいと思います」と、プロの世界に別れを告げた渡邊佑。2月からはユニホームをスーツに着替えて、ソフトバンク本社でのサラリーマン生活が始まる。“第2の人生”も実りあるステージとなるよう願っている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)