甲斐野、有原、森唯斗…ホークスとの「奇妙」な縁 上茶谷大河が家に飾る大切なもの

ソフトバンク・上茶谷大河【写真:竹村岳】
ソフトバンク・上茶谷大河【写真:竹村岳】

現役ドラフトでDeNAから移籍…東洋大時代の同学年には甲斐野央らがいる

 不思議な糸で、福岡と繋がっていたのかもしれない。ソフトバンクは12日、みずほPayPayドームで上茶谷大河投手の入団会見を行った。9日に行われた現役ドラフトでDeNAからの移籍が決まった。森唯斗投手、有原航平投手、甲斐野央投手……。28歳の右腕が語る、ホークスとの意外な縁に迫っていく。

 2018年ドラフト1位でDeNAに入団した。東洋大の同期は西武・甲斐野央投手、中日・梅津晃大投手、オリックス・中川圭太内野手らがいる。「(ホークス移籍は)甲斐野が一番驚いていると思うんですけど……。唯斗さんとも今年1年仲良くさせてもらって、奇妙だなって思います。不思議な感覚です」。かつての同僚たちが着ていたホークスのユニホームに、袖を通すことになった。

 小久保裕紀監督は先発での起用を明言しており、本人も「どこでも投げられるのが強みではあるんですけど、まだ未練というか、やり残したことがある」と強いこだわりを口にした。今季は18試合に登板して2勝2敗、防御率4.37。最後に先発登板をしたのは、2023年6月19日の日本ハム戦(横浜)だ。主にリリーフが“職場”となったここ2年、葛藤を抱いていたことを明かした。

「ドラフト1位で入ってきて、先発であまり結果を出せずに中継ぎになってしまったのは自分の実力不足だとわかっているんですけど。2桁勝ちたい、もっとチームに貢献できるのは先発だと思っています。ロングリリーフでまた違う形は見えたんですけど、直接的に貢献ができるのは先発だと思うので、やりたいなと思っていました」

 憧れの1人として名前を挙げたのは、有原だった。「日本シリーズを見ていても、笑ってしまうような凄みを見ていて感じました」。今季14勝を記録し、リーグ優勝に貢献した32歳。「出そうと思えば150キロを出せますし、両サイドにカットボール、ツーシームを投げられる。チェンジアップを投げると思えばフォークも投げますし。バッターは何が来ているかわからないと思います」と、まさに追い求める理想像だ。

 直接的な面識はないという。そんな中、昨年1月の自主トレ中の出来事だった。「甲斐野と自主トレをしていたんですけど、有原さんのグラブをいただきました。『はい』って」。憧れる大先輩の大切な道具を、甲斐野を通して手にした。「なぜかはわからないです」と苦笑いするが、今も自宅に飾ってある。「さすがに使えないです」と背筋を伸ばしていた。

 2023年のファン感謝祭、金色のネックレスをぶら下げて森唯のモノマネを披露。ホークスを戦力外となり、DeNAに移籍することが決まっていた右腕を“誇張”して表現し「僕まだ会ったこともないし話したこともないです」と苦笑いしていたが、親交はすぐに深まった。上茶谷自身も福岡が新天地となり「森さんからも『やばい』、『本当に頑張らないと、投げられないよ』と。電話した時に言われたので。危機感を持って頑張りたいと思います」とやり取りを明かした。

 今季の6月7日、ホークス戦(横浜)に登板した。リバン・モイネロ投手から右前に弾き返したものの、一塁ベースを踏んだ瞬間に転倒。「打って、転んで……。まさかソフトバンクに来ることになるとその時は思わなかったですし、何かの縁を表す瞬間だったのかなと今になって思います」と茶目っ気も含めて話した。パ・リーグが戦いの場になるだけに、打席に立つことはほとんどなくなる。「足首を折る心配がないですね」と、何度も報道陣を笑わせてくれた。

 自主トレについては「いつも通りやる予定だったんですけど、僕も甲斐野も年俸がダウンでお金がないので、なくなりました……。当初は横須賀でやる予定だったんですけど、ちょっとまだどうなるかわからないです」と言及した。新天地に移ることになった2025年、チームを何倍も明るくしてくれそうな男が、ホークスにやってくる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)