痛感した甲斐拓也の存在…「勝つの難しい」 “日本一の捕手”から海野隆司が得たもの

ソフトバンク・海野隆司(左)と甲斐拓也
ソフトバンク・海野隆司(左)と甲斐拓也

今季はキャリアハイの51試合に出場も「結果を残したわけじゃない」

 球界を代表する捕手の“行動”から学ぶものは多くあった。ソフトバンクの海野隆司捕手は5年目の今季、1度も登録抹消されることなくシーズンを戦い抜いた。51試合に出場して打率.173、2本塁、10打点。そのうち38試合でスタメンマスクを被った。そんな海野がシーズンを通して学んだものは甲斐拓也捕手の“姿勢”だった。

「壁が高いというか、もうそんなレベルではないので……。壁とかじゃないです。間違いなく日本一のキャッチャーだと思いますし。そこに勝つっていうのがなかなか難しいというのは、今年(試合に)出て痛感しました」

 海野が見てきたものは、試合で躍動する甲斐の姿だけではなかった。プロ野球選手でも緊張する試合前。投手にかける言葉や、気持ちの伝え方にも学ぶものがあった。一流の捕手と呼ばれるために、海野自身が必要だと感じたのはどのような部分なのか。そして、学んだことを来季はどのように活かすのか。

「ピッチャー優先で考えるのは間違いないので。その中で“どうやって伝えるか”っていうのは、めちゃくちゃ難しいんです。そういうのはやっぱりタク(甲斐拓也)さんを見て学びました」

 特に勉強になったと語る部分は、投手陣とのコミュニケーションにあった。試合に臨む上で捕手が考えるゲームプランは当然ある。それを押し付けるのではなく、投手の気持ちを優先させつつ、絶妙な塩梅で自身の考えを伝える甲斐の姿を何度も見てきたという。

「試合中はもちろんですけど、試合前のミーティングでの声かけも勉強になりました。自分の思ったことをピッチャーに伝えるっていうのは難しいので、そういうのも含めて会話をすること。それが大事だなっていうのは改めて感じました」

 海野も積極的に先輩捕手の“手法”を取り入れてきた。「一番はどうやったら伝わるかなっていうところですかね」。当初は気持ちを伝えることを難しく感じる部分もあった。それでも1年を振り返り、得た手ごたえがあった。「できるようになっている感覚はあります」。投手とコミュニケーションを取ることの大切さ、その積み重ねがチームを勝利に導くために重要であることを再認識したシーズンになった。

「今年に関しては、自分の中で“出してもらった”と感じていたので。自分が結果を残して試合に出てるっていう感じではなく、出させてもらっているだけっていう感じです。自分の中ではそう思っていたので。来年は今年の経験を本当の意味で活かせるようにしたいです」

 FA宣言している甲斐の去就に注目が集まるが、海野にとっては来季が勝負の年になることに変わりはない。どちらにせよ、今季を1軍で過ごし、身近にいる日本一のキャッチャーから学んだものは大きな財産になる。「とにかく必要と思ってもらえるような選手になりたいですね」。そう語る海野の表情はたくましかった。

(飯田航平 / Kohei Iida)