入団時に感じたドラフト順位“格差” 6位・大山凌の反骨心…「それだけは忘れない」

ソフトバンク・大山凌【写真:小池義弘】
ソフトバンク・大山凌【写真:小池義弘】

「1年目がすごく大事」恩師の言葉に応えた貢献度

 ホークスは4年ぶりのリーグ優勝に輝きました。鷹フルでは、主力選手だけではなく、若手からベテランまで選手1人1人にスポットを当てて、今季を振り返っていきます。今回はドラフト6位ルーキーながら、シーズン中盤から終盤戦にかけてインパクトを残した大山凌投手。「それだけは忘れないです」と語ったのは、下位指名で生まれた“反骨心”。感じていた順位格差を、どのように跳ね除けてきたのか? 強い意志を明かしてくれました。

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 チームの一員と認められるために、結果だけを求めてきた。ドラフト順位の“格差”は、大山も事あるごとに感じていた。「入団会見の時も、1位と2位は違うこと(球団のイベント参加)をやって、あと他は(何もない)、みたいな。でもホークスに入って、球団の人から(待遇の差を感じること)は別になかったですね」。順位による注目度の違いがあることは理解していたが、まざまざと“現実”を見せつけられた。

「やっぱりみんな大学の日本代表に入ったりとか、実績がある選手ばかり。しかも6位っていうのもあるので。1年目がすごく大事だと大学(東日本国際大)の監督に言われていたので。それは自分でも感じてたところはあるんですけど」

 入団後も、聞かれることは自身のことだけではなく、ドラフト上位選手のことも多かった。「入ってからも前田(悠伍)くんの素顔を知りたいです、みたいな」。それでも、その度に大山の反骨心は膨らんでいった。

 大山は1軍に昇格するまでの間、常々“マイペースで”と口にしてきた。新人合同自主トレ、キャンプと自分が今できる範囲の最大値で練習を積み、着実に力をつけてきた。その成果は、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)の目にすぐに止まった。

「真っすぐも変化球も球の質が高いなって。後はそれを高いレベルで維持できるかどうかっていうところ。その再現性だけだった」と倉野コーチ。2月、春季キャンプの時点で大山の可能性を見抜いた。課題を伝え、克服できれば1軍に昇格させる――。その期待に応えた大山は6月9日に1軍初昇格を果たした。

「先発を目指して(プロに)入ってきて、そのステップというか、段階を踏んでいく中で、1イニングだけじゃなくて、イニングを重ねて投げられることが、それ(先発)に近づいていくということ。ロング(リリーフ)をやらせてもらった時に、いい評価をもらえたかなという手応えが自分の中でありました。自分の投球をすれば、(プロでも)やっていけると思ったタイミングでした」

 昇格以降は1度も降格することなく、先発に中継ぎと、腕を振り続けてきた。17試合に登板して1勝1敗、防御率2.67と上々の成績を残し、リーグ優勝に貢献。右腕の原動力となったのが、ドラフト6位が故の反骨心だった。

「いざ1軍に上がった時の結果。それが1番目に見えるので、それしかないですよね。結果を出すために、どう頑張るか。周りに(実力を)示すには、必然的にそうなってくるので。メディアだったりファンだったりというところは、結果出さないとなかなか見えないじゃないですか。なので1軍での結果を大事にしてきました」と、結果で実力を証明してきた。

 時には大粒の涙を流した。4日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)の9回。無死一塁からマウンドに上がった大山は、3安打を打たれて3失点した。それでも、「自分とかが、下からまくり上げてきたら面白いじゃないですか。見てる側も自分的にも。自分が1番気持ちいいですからね」と、悔しさも成長の糧にしてきた。

“育成のホークス”と言われる球団。今シーズンも甲斐拓也捕手や周東佑京内野手ら、育成出身選手がチームを支えた。だからこそ、ドラフトの順位は関係ない。「逆に6位で入ったから、こういう反骨心みたいなものを忘れずにできているのかなとも思ったりはします。それだけは、この先もずっと忘れないです」。1年目から味わうことができたリーグ優勝。「すごいですよ。すごい経験ですね、本当に」。反骨心を忘れずにまた一歩、ホークスを支える投手へと成長していく。

(飯田航平 / Kohei Iida)