今の若鷹は「練習しなさすぎ」 牧原大成が山川穂高と“共鳴”…育成のあるべき姿

ソフトバンク・牧原大成【写真:竹村岳】
ソフトバンク・牧原大成【写真:竹村岳】

8月1日の楽天戦で育成出身選手の通算安打記録を更新「これで終わるつもりもない」

 ホークスが4年ぶりのリーグ優勝を飾りました。鷹フルでは、牧原大成内野手の単独インタビューをお届けします。第2回のテーマは「育成」について。プロ14年目を迎えた2024年、育成出身選手の通算安打記録を塗り替えました。故障の影響もあってファームで過ごす時間も長かった中で、牧原大が抱いた思いは――。「練習しなさすぎなんです」。誰よりもホークスを愛するからこそ、未来を担っていく若鷹たちに向けた本音を明かしてくれました。

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 8月1日の楽天戦(東京ドーム)だった。3回に二塁打を放ち、これが通算574安打目。元ロッテの岡田幸文氏(現楽天の1軍外野守備走塁コーチ)を超えて、育成出身選手の単独1位に躍り出た。熊本・城北高から2010年育成ドラフト5位で指名され、今季が14年目。背番号が3桁時代の気持ちを今も忘れずにいるから、たどり着いた数字だった。

「(通算安打の)記録と言っても、公式でもないですし。今、育成の選手もたくさん出てきていますし、いずれ抜かれる記録であって。僕もここまで打てると思っていなかったので。育成としてここまで頑張ってきてよかったと思いますし、これで終わるつもりもない。どんどん重ねていけたらと思います」

 4月28日に右脇腹を痛めて戦線離脱。「治る気がしなかった」と、長期のリハビリ期間を過ごした。昨年の契約更改では「『あなたたちは育成選手なんだよ。もうちょっと自覚を持ってやらないと終わってしまうよ』と言う話はしました」と明かしていた。自身も同じ境遇だったからこそ、育成ならではの事情もよく知っている。その上で、公の場で勇気を持って口にした苦言だった。今シーズンが始まってもう1度、近くで3桁の選手を見ることになったが、その印象は「変わらなかった」と言う。

「なんか、見とって『もったいない』というか。いいものを持っている選手がいっぱいいるし、だからこの世界にも入ってきていると思います。僕らが入ってきた時よりもいい選手がいますし、環境もすごく整っています。今、目先の楽しいことじゃなくて、活躍すればするだけ、変な話、お金ももらえますし。そこから楽しいこともできます。今の若い時って本当に苦しい思い、死に物狂いでやらないといけないと思いますね」

 タマスタ筑後は人工芝で、夏が本格化すれば“照り返し”でグラウンド上は熱気にあふれる。牧原大も「暑くはなっています」と踏まえつつも、「練習時間がすごく短いです。時間を決めて、決められた時間でやるのはチームとしてのルールかもしれないですけど、その後にどれだけやれているかと言ったら、そんなにやっていないし。それがちょっと見ていても残念だと思います」と続けた。自分が育成だった時は、グラウンドのライン引きも水撒きも、選手たちでやっていた。必要なのは這い上がっていくための情熱と、“死ぬレベル”の練習だ。

「山川(穂高内野手)さんとも言うんですけど、今の若い選手は練習しなさすぎるんです。本当に“死ぬくらいのレベル”で1回やらないと。技術を教わったところで、それをやる体力がないなら、そんなの身につくわけがない。1回、良くなるための練習をするための体力を、どこかでつけないといけない。そうじゃないと無理なので。そういう話は山川さんともしたし、育成選手にも伝えました」

 自分自身も、18歳でプロの世界に入ってきた。遊びたくもなる年頃だろう。牧原大も「僕も友達と遊んだりしていなかったかと言われたら、そうじゃないですし」と振り返る。「楽しいことをしてもいいと思うんですよ。でも、それを優先するんじゃなくて、全部自分でやり切った後にそういうことをしたり、こんなに楽しいことができるんだったらもっともっと頑張ろうって思える人もいるだろうし。それは捉え方次第じゃないですか」。1軍で活躍するのは簡単なことじゃない。誘惑に勝った選手だけが生き残ることができる、厳しい世界だ。

 リハビリ期間中は、石塚綜一郎捕手らを食事に連れて行ったこともあった。自分からも、若鷹に寄り添った。「中には(向こうから話を聞きに)来る子もいます。みんな可能性はあるんでしょうけど、『こいつだったら練習とかもやってくれるんだろうな』っていう選手には声をかけたりしますね」と、牧原大なりに1人1人の若鷹を見極めていた。育成出身であることが“ルーツ”であり、這い上がってきたことを“誇り”だと思っているから、思いを託せるような若手に出てきてほしい。

「間違いなく言えるのは、今の若手の選手より圧倒的にやっていた自信はありますね」。時代は変わっても、練習を重ねなければ技術も精神も身にはつかない。誰よりも“圧倒的”に努力してきた牧原大が言うからこそ、説得力がある。

(竹村岳 / Gaku Takemura)