投げるたびに、存在感が際立っている。自分が着用している背番号の意味を、しっかりと理解しているつもりだ。ソフトバンクのカーター・スチュワート・ジュニア投手は今季、18試合に登板して8勝3敗、防御率1.98。先発ローテーションの一角として、優勝争いの中心になっている。
チームが3連敗で迎えた7日の西武戦(みずほPayPayドーム)。先発した右腕は初回に1点を失ったものの、その後は試合を崩さなかった。7回を投げ切り、リードを保ったままリリーフ陣にバトンを託した。杉山一樹投手、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手がそれぞれ失点を喫して逆転負けとなったが、小久保裕紀監督も「カーターは言うことなかった」と絶賛するほどの内容。本人も「立ち上がりは少し不安定でしたが、少しずつ自分らしい投球ができるようになった。後半は良い投球ができたと思います」と充実感もにじませた。
2019年5月から、ホークスの一員となった。与えられたのは背番号「2」で、投手が着用するのは1962年の中島広喜(阪神)以来だった。球団の前任者は今宮健太内野手で、それ以前にも城島健司会長付特別アドバイザー兼シニアコーディネーターら、偉大な先輩たちが背負ってきた。改めて、2番についてどう思っているのか。今オフ、変更の可能性はあるのか。直撃してみた。
「ホークスと一番最初に契約をした時に1桁の番号をくれたということは、個人的には嬉しい気持ちがありました。どうにか1桁の番号という期待に応えられるように、ずっと頑張ってきました。今やっと結果が少しずつ出せるようになってきたので、(背番号を)変える気持ちはないです」
ホークスでも牧原大成内野手や三森大貴内野手ら、1軍での活躍を果たして、より若い番号に変更する前例は多い。今季の成績を踏まえて、来年以降のビジョンを聞いてみると、スチュワートは「日本のカルチャー的に、ポジションによっていい背番号があることも面白いことだとは思うんですけど、個人的には投手でも背番号2をずっとつけながらプレーしたいと思っています」とキッパリ言った。
日米で当然、さまざまな文化の違いがある。少年時代に着用していたのは26番が多かったといい、「アメリカでは、番号はそこまでの意味はない。26番は子どもの時にたまたま選んで、そこからできるだけ26番をつけていました。よくあるのは憧れの選手を自分の背番号にするっていうことですよね。個人的には、そのパターンではなかったんですけど(笑)」。2018年の全米ドラフトで1巡目指名を受けたものの、身体検査で異常が見つかったため合意には至らず。ホークス入団を選択して、2番に出会った。
日本の文化では“野手番号”であることは、しっかりと理解しているという。入団した当初、城島アドバイザーらが着用していたことについて「当時は知らなかったですけど、日本に来てからすぐにわかりました。今宮選手も城島さんも素晴らしい選手ですし、その背番号2っていうのは大事に思っています」。先輩たちへのリスペクトを胸に、球団からの期待にも応えられるように努力してきた。
大きな野望は、イメージを覆すことだ。日本では高校野球などでも投手なら1番、捕手なら2番とレギュラー選手が1桁を背負うことがほとんど。「もちろん日本の歴史、カルチャーをリスペクトした上で、ですけど。これからもしかしたら、投手の2番という数字が好きな選手が出てくるかもしれない。もっと気楽に投手でも2番を背負えるようになっていけばいいかなと思います」。スチュワートに憧れて、投手でも2番をつけたい。そんな野球少年が表れることを願っていた。もちろん、それほど衝撃的な成績も、残してみせたい。
「(投手が2番を背負うことは)珍しいとわかっているんですけどね。もっとつけやすくなったりすればいいかなと思います」。今季は6年契約の最終年。開幕前には新たに2年契約を結び、2026年までホークスで戦うことが決まっている。スチュワートが歩む道が、1つずつ球史にも残っていってほしい。