ソフトバンクは6日、西武戦(みずほPayPayドーム)に0-1で敗れて3連敗。打線が5安打無得点に終わり、一歩及ばず連敗を止められなかった。3度の得点圏で凡退した正木智也外野手に、小久保監督も「優勝争いをしていて、ゲーム差があると言いながらもプレッシャーがかかる9月、集大成。この経験をして成長すればいいんです」と語る。
4日の日本ハム戦では痛恨の逆転負けを喫した。3点リードの9回に松本裕樹投手が登板したが、先頭打者に四球を与えたところで緊急降板。大山凌投手、岩井俊介投手も日本ハム打線を止められずに、6点を失った。降板した大山は、ベンチで目に涙を浮かべていた。試合後には全体ミーティングが行われた。小久保監督は今季から試合前の声出しを撤廃するなど、選手を集めるタイミングは極端に少なくなった。今回はどんな経緯で、選手全員が集められたのか。奈良原浩ヘッドコーチが明かす。
号令をかけたのは「監督です」と言う。“右腕”として最も近くで、小久保監督の価値観に触れてきた。4日の逆転負けという結果も踏まえて「重みというか、結局、3点リードしてるところで、松本裕が途中で代わって、ひっくり返された試合だった。若い2人に後ろを投げさせた中での敗戦っていうところ。監督の若いピッチャーに対しての気遣いじゃないかなと思いますけどね。『責任を感じなくていい』ってコメントが(記事に)出ていたじゃないですか? あの通りだと思いますよ」と代弁した。
指揮官が選手を集めたのは、今季4度目だった。それまでに3月29日の開幕戦、柳田悠岐外野手が離脱した翌日の6月1日、6月8日のDeNA戦(横浜)の試合後の3度だ。奈良原コーチも「監督がミーティングする時って、多分1つの理由だけじゃなかったりするんで、チーム全体に対してどうこうっていうことじゃないかなと思いますけどね」と続けた。チーム全体に対して、選手を集めて何かを伝えなければいけないタイミング――。そう感じたのは、間違いなかった。
集められたのは、室内の打撃練習場だったという。指揮官を中心として、囲むように選手とスタッフが集合する。「岩井と大山は、責任を負う必要はない。あの場面でスッと抑えられるほどプロ野球も甘くない。幸いにも、9ゲーム(差)が残っているから、ちゃんと自分たちの野球をやろう」。小久保監督の発言が終わると輪は自然と解けていき、30秒ほどでミーティングは終わったそうだ。
2軍で指揮を執っていた時代から、若鷹たちも小久保監督をよく理解している。2軍監督は、2022年から2年間務めた。1年目は毎試合後に必ずミーティングを行っていたが、2年目は「何かがあった時だけ」というスタンスに変わっていった。川村友斗外野手も「今年監督がミーティングをすることはなかなかなかったですし、キュッと締まった雰囲気になりました」と背筋を伸ばしていた。
4日の試合で、川村はベンチから9回の戦況を見つめていた。新人2人が登板する姿に「投手のことはわからないんですけど、あそこで投げられてすごく緊張感の中にいたんだろうなと思いました」と振り返る。川村自身も途中出場が目立つ日々だが、ナインのために応援する姿勢は貫いてきた。「その時も応援しましたし、『頑張れ』と思っていました。でも、あの展開からひっくり返されたので、9回の大変さというのは感じました」と、プロの厳しさを痛感する出来事になった。
緒方理貢外野手は3月19日に支配下登録され、開幕から1軍にい続けている。残り試合が少なくなってきた9月の戦いについても「勝負の月なので。今日(6日の西武戦)みたいな接戦が多くなるんじゃないかなと思っています」と、緊張感を認識して日々を過ごしている。2軍監督時代から小久保監督が選手の前で発言する姿は何度も見てきたが、1軍と比較すると「それは比べものにならないです」とキッパリ。結果が全ての世界。重圧を背負って、チームの先頭に立つ小久保監督の言葉は、どんな時でも重い。
松本裕が離脱して、小久保監督も「もう1回、戦い方を変えるというところじゃないですかね」と自分に言い聞かせるように話した。簡単ではない道のりだと分かっていたが、9月に訪れた最大の試練。ホークスが貫く“自分たちの野球”で、必ずゴールテープを切る。