灼熱の筑後で、選手たちが沖縄の味を楽しんだ。振る舞われたのは“手作り”のサーターアンダギー。「世界一美味しいです」。地元出身選手が思わず絶賛するほどの郷土菓子を差し入れた選手はいったい誰だったのか。舞台裏を探った。
「(高校時代にも)差し入れしてもらっていました」。そう明かしたのは嶺井博希捕手だった。100個ほどのサーターアンダギーを選手やスタッフにプレゼントしたのは、東浜巨投手だった。
嶺井は1学年上の東浜とともに、沖縄尚学高では全国優勝を経験した。高校時代の厳しい練習の日々で、楽しみの一つが東浜家のサーターアンダギーだったという。
現在は揚げ物を控える食事制限をしているという嶺井だが、その味を知っているからこそ、差し入れに思わずかぶりついた。「レシピを盗もうかと思いました」。懐かしい味に大満足の様子だった。
同じく沖縄出身のリチャード内野手も「東浜さんのサーターアンダギーは初めてでした。美味かったですね」とニッコリ。「まず一口で食べれます。僕はですよ(笑)。普通のとは違って一口で食べられて、パサパサしすぎず、まろやかで美味かったです」。これまでに食べたことがない味と食感だったそうだ。
「僕の世界一はお母さんのですね。(東浜が作ったものは)世界で2番目にうまかったです」と、上機嫌に話したリチャード。思い出した母の味。東浜家の手作りサーターアンダギーは、沖縄出身の選手にとって故郷を思い出すきっかけになったようだ。
この舞台裏を明かしたのは、重田倫明2軍広報だった。「巨(東浜)さんのお母さんが材料を持って来られていたみたいで、巨さんが(作るのを)手伝われたそうです。めちゃくちゃ美味しかったです」と笑みを浮かべた。
重田広報は現役中に東浜と自主トレを一緒に行うなど、今も親交が深い。現役を引退して広報となった今でも頻繁に食事に行くほどの間柄だが、手作りのサーターアンダギーは今までに食べたことがなかったそう。その味に思わず感銘を受けたという。
チームメートもスタッフも虜にした東浜家の逸品。日々の過酷な練習の中で吹いた涼やかな風のように、多くの人を笑顔にした。