試合終了の5分後にSNSで即“謝罪” 又吉克樹の「人として」…翌日に清宮に伝えた言葉

ソフトバンク・又吉克樹【写真:竹村岳】
ソフトバンク・又吉克樹【写真:竹村岳】

3日の日本ハム戦で9回に登板…先頭の清宮に死球を与え「申し訳ない」

 試合後、5分後の投稿だった。ソフトバンクは3日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に7-8で敗れた。9回に登板して1回を無失点に抑えたのが、又吉克樹投手だ。接戦を落とした後、右腕は自らのSNSで「清宮選手申し訳ない。帽子取るのを忘れてしまいました。今後気をつけます」と投稿した。その行動に込められていたのは「人として」という思いだった。

 序盤からシーソーゲームだった。3回を終えて6点を奪うも、先発の有原航平投手が7回6失点。7回に山川穂高内野手の19号ソロで勝ち越したが、8回にダーウィンゾン・ヘルナンデス投手が2失点を喫した。又吉は9回のマウンドへ。先頭打者の清宮への2球目、内角球が右肘に直撃した。続くマルティネスは見逃し三振。松本を二ゴロ併殺に斬って、自分の役目を終えた。

 又吉が“謝罪”したのは、清宮に死球を与えた後の自身の行動について。帽子のツバには触れていたが、脱ぐことはしなかった。この時の心境について、こう振り返る。

「その場で切り替えないといけないですし(当ててしまったのは)インハイで体を起こそうとした球でした。『次がアリエル(マルティネス)だな』っていうところにもう、頭が行ってしまっていました……。(投稿したのは)人として、です。人として申し訳ないです。ああいうことは、時間が経ってしまうともっといけないので」

 午後5時41分にゲームセットとなり、投稿は午後5時46分だった。ファンの声はさまざま。厳しい意見もある中で「律儀さと誠実さ」「又吉さんのこういうところが好き」「普通にいい人」と好意的なものも。一方で「ここまで言わなきゃいけない世界になったのか」と憂えるような声もあった。又吉自身の記憶の中にも「前にもあったんですよね。西武の外国人選手に当てて、その時も取るのを忘れてしまって」と、過去の経験も突き動かしたような行動だった。

 1点をリードされた9回のマウンド。チームが同点、逆転するためにも1点も与えることはできない。今の必勝パターンはヘルナンデスや松本裕樹投手ら。7月のチーム21試合で又吉の登板は5試合と、ブルペンの競争における自分の立ち位置を考えても、日本ハムのクリーンアップを相手に厳しく攻めるのは当然だった。「インコースを攻めないと。(清宮も)踏み込んで来ていましたし」と振り返る。シュートやカットボール、ベースの横幅を目一杯使う投球スタイルを、この日も貫こうとしていた。

「その後のアリエルにもインコースは行きましたしね」と、ファウルになった4球目は内角への直球だった。内角についても「行かないといけない立場ですし、そうじゃないと結果もわからないですから。攻めないといけない場所なので」と言う。3回には同点3ランを放っていた清宮。又吉自身が誰よりも、結果を出すということだけに集中していた。自分のスタイルを貫けなければ、余計に大きな後悔だけが残るからだ。

 意外にも、又吉は清宮と面識があるという。「ギーさん(柳田悠岐外野手)とご飯に行った時に一緒にいたのかな」。柳田と清宮が自主トレをともにしているだけに、同席した経験があったそうだ。「ちょこちょこと話したり、会えば律儀に頭を下げたりしてくれます」と人柄にも触れたことがある。「帽子を取らなかったのはまずいと思いましたけど、色々と自分も思うことがあって(勝負に)入り込みすぎた。俯瞰できなかったです」と、淡々と話していた。

 一夜が明けた4日、試合前の練習を終えると又吉は清宮のもとに足を運んでいた。「『当たったのはエルボーガードの上』だと言っていました。『ごめんよ』って言って、その後も普通に『調子いいね』って話をしていました」。当人同士のことは、これで決着。リスペクトの気持ちは絶対に忘れず、グラウンドで会えばまた、全力で真剣勝負する。

(竹村岳 / Gaku Takemura)