そんな柳町が活躍するたびに、ファンの間で“論争”にあがるのが「ギーマと呼ばれたいのか、達(たつる)と呼ばれたいのか」。本人に直撃すると「え……」と熟考する。「本音を言っていいんですか……?」と前置きすると、胸中を打ち明けてくれた。
「マジでどっちでもいいです、もうどっちでも良くなってきました(笑)。好きなように呼んでくださいって感じです。違う名前でもいいです」。ギーマか、達。それ以外の新しい呼び方も「全然いいです。なんでもOKです」と頷いて答えた。
「どっちでもいい」というのは投げやりなのではなく、柳町にしかない事情も存在する。ギーマという愛称は、チームの顔でもある柳田悠岐外野手の「ギータ」から派生したと考えられる。これに柳町は「最初はギーマって呼ばれて、ギータさんに申し訳ないなって思っていました。それもあって、達がいいなって思っていたんです」と、偉大な先輩とちょっぴり“被っている”ことに複雑な気持ちを抱いていたそうだ。
3年目の2022年に89安打を放ってブレークした。活躍に比例して、自分の名前も広がっていく。「思っていた以上にギーマばかり呼ばれていましたし、グッズも出始めて、もうどっちでもいいかなって思うようになりました」。ギーマという愛称が広がったことにも、もちろん感謝している。ギーマか、達。どちらかを自分が決めるのではなくて、どちらも受け入れたいから「どっちでもいいです」と、ファンの方々に決定権を託していた。柳町らしい優しい思いだ。
一方で、実情も教えてくれた。チーム内でギーマと呼んでくる選手は「正直、いないです」という。先輩の周東佑京内野手は「達」と呼び捨て。正木智也外野手や廣瀬隆太内野手ら後輩組も「達さん」と「周りの人から呼ばれたことはないです、ギーマとは(笑)。(チーム内では)達以外はほとんどいないです」と笑って明かす。
これにもまた、柳町だけの理由がある。慶応高、慶大を経て2019年ドラフト5位でホークスに入団した。大学時代のニックネームについて「それこそ大学の頃は柳町なので『マッチ』って呼ばれていました。でもマッチさん(松田宣浩)がいたので、それはもう終わりました(笑)」。通算1832安打を放った「熱男」こと、松田さんと今度は“丸被り”してしまうこともあり、柳町から「こう呼んでください」とファンに呼びかけることも難しかったのかもしれない。
確実に言えることは、それだけ柳町の名前が知れ渡り、チームにとってもファンにとっても欠かせない存在になったということ。ギーマと、達。「好きなように呼んでください」。柳町らしい、爽やかな笑顔だった。