有原航平はホークス2年間で33試合に登板…先発マスクを被るのは全て甲斐拓也
何人もの“相棒”とコンビを組んできた中でも「一番」だという。ピッタリの呼吸で、完封劇を一緒に演出した。ソフトバンクは27日、オリックス戦(みずほPayPayドーム)に3-0で勝利した。2安打に抑え、今季初完封を飾ったのが有原航平投手だ。バッテリーを組んだ甲斐拓也捕手らに「本当に拓也がリードをしてくれて、バックが守ってくれた。感謝したいなと思います」と頭を下げる。日米でのキャリアで多くの捕手と組んだ中で甲斐が「一番」である部分を明かした。
24日、神宮で行われた「マイナビオールスター2024」で先発登板。わずか5球で役割を終えると、中2日で今度はホークスのためにマウンドに立った。初回、先頭打者に四球を与えるが併殺打などで立ち上がりをしのいだ。その後は崩れそうな雰囲気すら見せずに、7回を終えて1安打。2安打2四球、105球で9つのゼロを並べて「ここ(本拠地)で9回まで投げられたのは初めてだったので、すごくうれしかったです」と頷いた。ゲームセットの瞬間にマウンドに立っていられるのは、やっぱり格別だ。
昨シーズンは17試合に登板して、チーム唯一の2桁勝利となる10勝。今季の16試合登板も含め、有原の登板時は全て甲斐が先発マスクを託されてきた。捕手として、甲斐の持ち味はどんなものなのか。有原にとっては、過去のキャリアを振り返っても「一番」という部分があると言う。
「まずはブロッキングじゃないですかね。どこにランナーがいても、落ちる球を下に狙って投げられる。そういう気持ちで腕を振れるので、いいボールが投げやすいです」
ゴールデングラブ賞6度の守備力。甲斐のブロッキング技術があるから、フォークやチェンジアップといった球種がより輝く。日本ハム時代、メジャー時代にバッテリーを組んだ捕手たちと比較しても「すごい人はもちろんいましたけど、拓也はそこが一番うまいんじゃないかと思います」と、絶賛の言葉が続いた。
投手との密なコミュニケーションや、相手打線に対する研究など甲斐は献身的な姿勢でチームの勝利に貢献してきた。有原も「本当に毎イニング、相手のバッターのことを話しますし、ミーティングでもいつも考えて(意見を)持ってきてくれるので、いつも助かっています」と頭を下げる。リスペクトを抱きつつ、時には「良くないものは良くないと、そういうことはハッキリ言ってくれるので、ありがたいです」。投手のためを思って言ってくれているとわかっているから、甲斐を信じて、マウンドに立つことができる。
甲斐の姿を一番近くで見てきた高谷裕亮バッテリーコーチは「いろんなことを経験してるから、そういう風に行き着いてるんじゃないですかね。会話して、成功して、失敗して、それでも怯まずしっかり話をして、彼なりに学んできたこと」と代弁する。捕手なら、投手の言動には常に目を光らせているもの。グラウンド外の時間も含めて「ユニホームを着ていない時こそ、本質が出る人もいるじゃないですか。そういうところもしっかり観察することも大事ですよね」。甲斐が経験してきた全てが、この日の完封勝利にも繋がっていた。
この日の投球に関して有原は「変化球のコントロールがよかったなと思います。特にツーシームが良かったです」と明かす。甲斐自身も「打たせて取ることもできますし、狙った時に三振を取ることもできる。初回もゲッツーを取りましたし、ああいったことができるのが有原の投球ではあると思うので。なかなか絞りづらい部分。両サイドのコースもしっかり動く球、強い球、縦の変化、緩急ってしっかり投げていた」と胸を張った。105球、2安打という結果に表れたのが、投球の幅という有原の最大の持ち味だった。
2回無死満塁では、甲斐が左翼線に先制の2点二塁打を放った。お立ち台で有原は「いつも『打ってくる』と裏で言っているので、いつもやってほしいなと思います」と言ってファンを笑わせる。「今日は言っていなかったですよ(笑)。でも、よくそう言ってきますし、本当に打ってくれたので助かりました」と言えば、甲斐も「なんとかしたいなという気持ちでいきましたし、今日は“有原さん”のピッチングのおかげです」と笑顔で語った。両リーグ最速で10勝に到達した有原&甲斐が、ホークスの新しい名バッテリーになる。
バットでも援護してみせたが、有原と甲斐の呼吸が合ったからこそ掴めた勝利だった。小久保裕紀監督も「エースらしい素晴らしいピッチングでした」と絶賛。「バッテリーでいい試合が作れました」という有原の言葉が、チームの思いを表現していた。
(竹村岳 / Gaku Takemura)