周東の師・本多コーチも絶賛「相手の心理を一瞬で見抜く」
まさに「これぞ周東」と呼ぶに相応しい活躍だった。俊足を飛ばしたスーパーキャッチに、相手の“常識”を逆手に取った神走塁……。周東佑京内野手が自由気ままにグラウンドを駆け回った。
17日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。まずは初回2死三塁で岡の右中間への大飛球をフルスピードで追い、見事にスライディングキャッチ。プロ初先発のルーキー、大山凌を助けるファインプレーだった。
1点を追う5回は先頭で左前打を放つと、今宮健太内野手への2球目に32個目の盗塁となる二盗に成功。今宮はワンバウンドの変化球に空振り三振を喫したが、捕手の一塁送球の間に三塁を陥れる好走塁でカバー。内野陣が前進守備を敷く中で、続く吉田賢吾捕手の二ゴロで本塁へ突入。頭から滑り込み、同点に追いつく1点をもぎ取った。
「ああいう走塁があるから(試合に)出られているわけで。できて当たり前のプレーですけど」。事もなげに言い切る姿に、“走り屋”としてのプライドが詰まっていた。特に“野球偏差値”の高さを示したのが三振の間に三塁へ進んだプレー。野球選手としての「常識」に隠された隙を見逃さなかった一瞬の判断を、本人に、そしてコーチに解説してもらった。
「開幕から『あれはどうなんだろう』って、ずっと考えていたので」。自身が二塁にいて、打者がワンバウンドのボールに空振り三振を喫する。捕手は打者走者をアウトにするために一塁へ送球し、その隙に三塁を陥れる。周東が常に頭に入れていたのが、まさにこの日と同じシチュエーションだった。
このワンプレーには相当の自信があったという。「まあ、こっち(二塁)に投げてくることはないでしょ、っていう考えはありますよね」。仮に捕手が二塁へ送球しても、周東が帰塁できれば打者走者も一塁に残る。そうなると一気にピンチは拡大する。野球の常識的にいえば、三振に取った打者をアウトにするのは当然の選択となる。それを逆手に取った判断だった。
一方でリスクヘッジも考えていた。「(三塁に)いって、(タイミングが)際どかったら(二、三塁間で)挟まれて、(今宮)健太さんを二塁にいかせればいいかなって」。そうなれば1死二塁で、形的には空振り三振で一つアウトが増えたのと変わらない状況になる。言葉にするのは簡単だが、一瞬のプレーでそこまで頭が回るのは、常に走塁意識を高く持っていることの証だ。
くしくも本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチが口にしたのも「常識を破る意識」だった。「三振した打者をセーフにするわけにはいかないでしょ。そういった心理を一瞬で見抜く。オールセーフになったら投手にはすごくダメージが残る。そこを考えたら絶対に(一塁へ)投げるやろって。ああいったことも野球なので。野球のルールで認められているので」。
周東の師ともいえる本多コーチも、現役時代に同じプレーを何度か成功させたことがあるという。「次は目で(進塁を)抑えてくるでしょうけどね。でも送球が遅かったり、難があったりする捕手なら、そんなことをする暇はないでしょうから。そういったデータの把握や観察力ってところです」と、周東の判断力を絶賛した。
これだけの走塁を見せても、周東の目線は先を向いていた。「行くと思わせることが一番。全部が全部いくわけじゃないけど、そういうのもあると考えさせるだけでも、相手は(低めへの)変化球を投げにくくなると思うので。今後に活きてくるんじゃないかと思います。特に(ロッテは)2位のチームですし。いろいろと考えてくれればいいかなと思います」。自らが持つ最大の武器の活かし方を、周東は知っている。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)