衝撃的な打球速度「久々に感じた。ペーニャやカブレラみたい」
打者が一日で一番長く対峙する投手は誰か。それは通称“バッピ”とも呼ばれる自軍のバッティングピッチャーだ。「今日どんな感じだった?」。日頃から打撃投手に意見を求めてくるのが、山川穂高内野手だという。
16日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。両チーム無得点で迎えた5回1死二、三塁で打席に入った山川が相手左腕C.C.メルセデスから左中間への2点適時二塁打を放って先制に成功。結果的に決勝打になった一打を含め、16日は3安打をマーク。ここまで苦しんできた主砲に復調の兆しが見えた試合となった。
チームが連敗を3で止めた中、小久保裕紀監督は試合後に「今日をきっかけに(不振から)抜けてくれれば、チームとしては落ち着くなと思う」と話した通り、大きな1勝となったことは間違いない。主砲にどんな変化があったのか。誰よりも真正面から山川のバッティングを見ている打撃投手に話を聞いてみた。
「2日前(15日)くらいからですかね。バットの軌道がほんの少し変わったなと。山川さんから『こういう打ち方でやってみようかな』っていう話を聞いていたんで。『(変わったのが)分かった?』って聞かれて、僕も『分かりました』って。それは毎日投げているんだから気付きますよね」
そう明かしてくれたのは岡本健打撃投手だ。今季は開幕から試合前の打撃練習で山川に投げ続けており、二言ほどのやり取りではあるが、頻繁に「打撃チェック」をお願いされているという。
「自分に話を聞いてくるっていうのは、山川さんが圧倒的に多いですね。内容的にも本当に打撃に関して細かく繊細に考えていることはよく分かります。そうやって話してくれると、こちらとしても日々の仕事がやりやすくなりますね」
打撃論を語りだすと止まらないのが山川本来の姿。打撃コーチだけでなく、どんな立場の相手にも自らの感覚を証、何かヒントを得ようとする姿勢こそが、通算232本塁打(16日現在)を積み上げてきた背景にある。
同じく山川を“担当”する岸健一郎打撃投手は、フリー打撃の衝撃をこう表現する。「打球の速さ、強さは本当に外国人選手と同じレベル。久々に感じましたね。(ウィリー・モー)ペーニャとか(アレックス)カブレラもそうですけど。デスパ(アルフレド・デスパイネ)も速かったですけど、ペーニャはトップクラスでした。全然違います。山川はそのクラスですね」。
打球速度といえば思いつくのは柳田悠岐外野手だが、岸打撃投手は「近いものもありますし、ギータも速いんですけど……。やっぱり違いますね。“怖い”っていう感覚」と証言。歴代でもトップクラスのパワーを誇る助っ人級の打球だという。
打撃投手だからこそ分かる山川の変化と規格外のパワー。3安打を放った試合から一夜明けた17日、打撃投手2人の表情は明るかった。「自分が投げている選手が打ってくれるのは嬉しいですよ。このまま調子が上がってくれればなおさらですね」。主砲の復調を願う“仲間”は、ここにもいる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)