中村晃が明かすプロの“生き方” 何度も味わった格別の瞬間「それで喜んではダメ」

ソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】
ソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】

中村晃が語った「優勝したいですよね」

 2020年のリーグ優勝、日本一から4年。“若鷹”から、優勝への思いが溢れ出た。渡邉陸捕手は「僕たちはビールかけを経験していないので、それをやりたいなという話になった」と明かした。食事の場でこの思い伝えた相手は、オフの自主トレをともにした、中村晃外野手。2020年以降、悔しい思いをしてきたホークス。若手の発言にベテランは何を思ったのか。

 渡邉陸は神村学園高から2018年育成ドラフト1位で入団。3年目の2021年8月に支配下登録された大型捕手だ。今年2月の春季キャンプではA組スタートとなったが、初日に左第1肋骨を疲労骨折するなど、悔しい日々を過ごしてきた。現在は回復し、1軍を目指して2軍で汗を流しており、リハビリ期間は「1軍の試合を見て、常に野球のことを考えていた」と、下を向くことなく野球と向き合ってきた。

 一方、帝京高から2007年高校生ドラフト3巡目で入団した中村晃は、6度のリーグ優勝と、7度の日本一を経験している17年目の大ベテランだ。常勝軍団と言われるホークスを支えてきた34歳が、渡邉陸の言葉を聞いた胸の内を明かした。

「(ビールかけを)経験したことがない選手が増えたなって。そういった感じでしたね」

 渡邉陸の思いを聞いた中村晃はこう感じたという。優勝を知らない若手が増えてきた中、いろいろな思いを抱いている様子だ。中村晃自身、何度もビールかけを経験してきたが、その喜びの度合いは毎年違っていたという。

「自分がしっかり試合に出て、ビールかけする、優勝するっていうのがやっぱり一番格別というか。そういう気持ちがあるので、そんなに出ていないのにビールかけをしても……。それで喜んでいるようじゃダメだと思うんです」

 いかにも中村晃らしい考え方だ。同じ優勝、同じビールかけであったとしても、シーズン成績はもちろん同じではない。自身が納得する数字や、チームへの貢献によって、優勝の重みは変わってくる。何度も経験してきたからこそわかる味がある。

「ビールかけをしているということは優勝をしているということなので。優勝はやっぱりしたいですよね」。代打での起用も増えている中で、自身が思うほどの出場数には届かないかもしれない。それでも日々、己を磨き続ける姿がある。

「食事してる時だったから。やったことない選手が増えたよね、ぐらいの感じで言ってました」。中村晃が抱く思いと考えは、その場で伝えることはなかった。後輩たちには納得した成績を残し、格別な瞬間を迎えてほしいとの思いがあったのかもしれない。

(飯田航平 / Kohei Iida)