今の力量を見極めるために、スタメンを託した。“日本一”の投手を相手に、自分をさらけ出してもらった。ソフトバンクは24日、ロッテ戦(ZOZOマリン)に1-3で敗戦した。相手の先発が佐々木朗希投手という中で、「7番・一塁」で先発したのがリチャード内野手だった。首脳陣がスタメン起用に込めた思いとは、どんなものだったのか。小久保裕紀監督、奈良原浩ヘッドコーチ、村松有人打撃コーチの言葉から紐解いていく。
第1打席は初回2死満塁。ワンバウンドの変化球に空振り三振に倒れ、追加点を奪うことができなかった。4回1死では157キロに詰まらされ、力ない遊飛。6回2死一塁では直球を打ち返すものの、左翼の正面に。3打数無安打で、9回1死一塁では代打を送られて交代した。
オープン戦での対戦はあるものの、公式戦では1度もないリチャードと佐々木の対戦。ベンチでは佐々木から昨季10打数4安打の中村晃外野手。今年のオープン戦で安打を放った川村友斗外野手も控えていた。その中でリチャードを起用した意図を、小久保裕紀監督が明かす。
「まあ、佐々木朗希の球をちょっと……。日本で一番速いピッチャーを(相手に打席に)立たせようということで。テストじゃないけど、真っすぐどこまで対応できるのか。3打席目の対応はよかったですけどね。まあ、今日本で一番速いピッチャーにどう対応するか見ようということで」
逆転勝利で白星を飾った18日の西武戦(みずほPayPayドーム)でも、指揮官はリチャードを「7番・一塁」で起用。その際も「フリーバッティングがめちゃくちゃ良かったんで、ちょっと使った方がいいかなという話です」と話していた。この日の試合前の時点で打率.273と、決して調子を落としているわけではない。監督の言葉通り、佐々木に対してどれだけの力を見せられるかを、首脳陣としても見極めるつもりだった。
リチャードのスタメン起用は18日の西武戦以来。その後の3試合は代打から途中出場だったものの、3打数無安打2三振に終わっていた。村松有人打撃コーチは「代打で全然対応できてなかったので、スタメンでというところもある。スタメンでダメだったら当然(入れ替えの)対象選手になるので。そこのところですね。見極めをするための材料、というのもあります」と厳しい目線を忘れない。交流戦前の最後のカードだけに「交流戦はやっぱり代打が必要になるので、そこのところでっていうところもあります」と続けた。絶対的なレギュラーでないのなら、どんな状況でも結果を出してアピールするしかない。
村松コーチは「普通なら川村いったり、晃いったりするところじゃないですか」と言いつつも「そっちの方が大きい」と、この時期だからこそ試すことができると語る。奈良原浩ヘッドコーチも「1本弾き返せた(左飛)のは自信にもなると思うし、その前は変化球を空振り(初回2死満塁で空振り三振)してしまったのが課題になると思う。あの真っすぐにどれだけできるのかの比重は大きかったと思います」。毎試合がそうだが、しっかりと“評価の目”でリチャードを見ていた。だからスタメンを託した。
21得点、12得点と打線に勢いがついて千葉にやってきたが、佐々木に抑えられた。小久保監督も「ランクが違います」と結果を受け止める。チームが首位をひた走る中でも、自分の立場を掴み取ろうと、選手は一瞬一瞬を戦っている。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)(竹村岳 / Gaku Takemura)