初回のダブルスチールに野村勇は「危なかったです…」
1歳下の後輩への気遣いだった。ソフトバンクは18日、本拠地みずほPayPayドームで行われた西武戦に3-2で逆転勝ちした。決勝点は8回の近藤健介外野手の劇的な逆転6号2ランによって生まれた一戦で、初回の貴重な先制点に繋がったのは自慢の“足攻”だった
先頭の周東佑京内野手が四球で出塁。5月1日の楽天戦以来、10試合ぶりにスタメンで起用された野村勇内野手も四球で続いた。柳田悠岐外野手が空振り三振に倒れると、次の山川穂高内野手への初球に周東が動いた。西武先発の渡邉のモーションを完全に盗み、三盗に成功。野村勇内野手もスタートを切っており、見事にダブルスチールを決めた。
続く山川の三ゴロで周東は本塁へと生還。近藤健介外野手も凡退しており、周東と野村勇の重盗がなければ、生まれなかった先制点だった。「あの場面でいったら、内野手は下がるんで。ゴロさえ打てば1点は入るんでね。そういう感じの点の取り方でしたね」と、小久保裕紀監督は頷いた。
このダブルスチール、周東は「いけると思ったので走っただけです。勝手にいきました」と明かす。ベンチのサインではなく、周東の単独スチールだった。この周東のスタートに面食らったのが一塁走者の野村勇だ。「クイック早いからって言っていたから、いかないと思っていたんですけど……。危なかったです……」。事前に気配を感じてスタートを察知。周東に遅れることなく二塁を陥れた。
ただ、これには伏線があったという。周東はいつも2番に入る今宮健太内野手や川瀬晃内野手と試合前にその日の戦略を話し合っている。相手投手の特徴も考慮して、盗塁を狙うのか、狙わないのか、考えを伝えるのだ。この日、野村勇には「クイック早いから走らないから、好きに打っていいで」と伝えていたという。この時の会話が野村勇の頭の片隅に残っていたという。
もちろん西武先発の渡邉のクイックは実際に早かった。ただ、その言葉の裏には1歳年上の先輩である周東の、野村勇への気遣いも詰まっていた。
「普段(スタメンに)入っていない選手なんで、探り探り、見ながらやる余裕もないだろうと思って。そうやって言っておいた方がいいのかな、と」
野村勇は10試合ぶり、今季4度目のスタメン出場で、2番での起用は今季初だった。当然、緊張もあり、アピールしなければいけない立場でもある。自分が盗塁するために、要らぬ気を遣わせてもいけない。野村勇自身の打席、ボール、プレーに集中させてあげたいという、周東なりの思いもあった。
リードオフマンとしてチームを引っ張る周東。選手会長として、レギュラーとして、先輩としての振る舞いが際立つ。チームは今季最多の貯金16。好調のホークスの中心に周東佑京がいる。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)