頭を悩ませていたのはウォーカーの状態…登録抹消前に語っていた“我慢の基準”
小久保裕紀監督が、鷹フルの単独インタビューに応じた。テーマは「ここまでの戦い」。指揮官が絶賛したのは、周東佑京内野手の存在だった。昨季から成長を感じる点、監督となって改めて「脅威」と思える点について語った。また、5月1日の楽天戦で今季1敗目を喫したロベルト・オスナ投手にも言及。小久保監督とオスナ、2人の間に見える“信頼関係”にも迫っていった。
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27試合を終えて18勝7敗2分。貯金11を作っても小久保監督は「まだまだ先は長い」と繰り返す。就任1年目、開幕からロケットスタートを切った。率直に、小久保監督の目に今の課題と収穫はどのように見えているのか。「めちゃくちゃ大きいです」とうなったのは、周東の存在だ。
「打線にしても、ほぼほぼ固定でスタートした中で、その各打順の人たちは自分の役割を果たしてくれている。打線に関してはね。だから、出塁率が高い選手が上位にいるし、ということでしょうね。これがもし機能しなければいじくらないといけないこともあるでしょうけど。1、2番は入れ替えたこともありますけど、周東のここまでの活躍はめちゃくちゃ大きいです」
春季キャンプ中から小久保監督をはじめ、城島健司会長付き特別アドバイザー兼シニアアドバイザーも「彼は今の成績で終わるような選手じゃない」と大きな期待をかけてきた。開幕して23試合に出場して30安打を放ち打率.316。リーグ2位の9盗塁を記録し、課題とされてきた出塁率.389だ。1軍の指揮を執るようになった小久保監督の目から見ても、周東の存在は脅威だという。
「もちろん、もちろん。普通に出たらとんでもない記録を作ってしまうんじゃないかというくらい、走力、脚力があるので、相手にとっては脅威でしょう。ただ塁に出ないことには、発揮できないという中で今は打率も3割を超えていますし。打率というよりは出塁率ですね。とにかく2ストライクに追い込まれたら何球でも投げさせて、ボール球は振らずに我慢せえよっていうバッターになってもらいたいですね」
4月16日、17日の日本ハム戦(エスコンフィールド北海道)は2試合で5得点。周東は10打数1安打で、小久保監督も「札幌で塁に出なかったら点が入らないので。やっぱりめちゃくちゃ大きいですね、彼が1番に収まるということが」と改めて存在感を思い知った。家庭の事情で離脱した期間は川村友斗外野手が台頭するなど、選手それぞれが役割を果たしているものの、チームが首位に立っている大きな要因が周東だ。
上位打線はほぼ固定のメンバーで戦っている中で、頭を悩ませていたのがアダム・ウォーカー外野手だった。20試合に出場して打率.169、1本塁打で4月30日に登録抹消。それでも小久保監督は「我慢をしようと最初に決めているので。その我慢する打席がどれくらいかっていう議論はしますけど、まだ50打席くらい(インタビューの時点)。その中で、兆しが見えない限りは周りの選手も納得しないでしょう」と語っていた。2軍に行ってもらうことにはなったものの、どれだけ大切な存在かもわかっているから、信頼は揺るがない。
「それでも実際、機能していたわけなので。だから、あとは長い目で見た時に右の長距離砲っていうのは編成が必要だということで獲得しているわけなので。その辺は一定の我慢は必要かなと思います。たまたま、チームがいいスタートを切れたおかげで、貯金がある状態で進んでいることも大きいです。でないと、我慢したくてもそれを許してもらえない状況もある。その時になんとか復調というか、手応えを掴むというか、そうしてもらいたいなと思います」
投手陣について問われると「ものすごく頑張ってくれています」と即答だ。チーム防御率2.19、65失点、被安打「170」はリーグ1位。近年、課題であり続けた四球も74個で、日本ハムの56個に次ぐリーグ2位だ。もちろん、試合を作ってくれる先発陣も大きな要因。「本当に仕事をしてくれている。先発がゲームを壊した試合がほとんどない。だからそういう位置にいるんじゃないかなと思います」。中継ぎと先発がガッチリと噛み合っていることも、今季のチームを象徴している。
気になる存在として挙げるなら、ロベルト・オスナ投手だろう。13試合に登板して8セーブも防御率3.86。5月1日の楽天戦では今季1敗目を喫した。指揮官も「本人のコメントにもあったように本調子ではない部分はある」としながらも「敗戦投手にはなっていないので。抑えは同点までOKというのが僕の野球感。別に逆転もされていないですし、今のうちにメカニックも含めてアプローチはかけているので、実績のある選手ですし状態が上がってくるのを待つだけです」と、インタビューを行った時点でも厚い信頼を口にしていた。
オスナも「小久保さんはいい時も悪い時も毎朝来てくれて『おはよう』って元気に挨拶してくれる。そういう変わらない姿っていうのは嬉しいです」と語っていた。本調子でなくとも、不変の信頼が態度に表れていることが嬉しかった。小久保監督は絶対に、コーチを飛び越えて選手に指示をすることはしない。その上で、選手とのコミュニケーションは何よりも大切にしている。
「開幕戦の日だけしたけど、全体ミーティングをしない。でもグラウンドで全員に会って挨拶するというのはルーティンにしているので、だから全員に会います。そこで気になることがあったら立ち話をするし、それが僕は一番大事なコミュニケーションのあり方だと思う。だからそこはそういうふうにしていますけど」
今は首位に立っているものの、2軍も含めた“チーム全員”で戦う意識はもちろん持っている。長いシーズンで苦しい時も、ファームの力を借りる時が来ることも、指揮官は誰よりも知っている。
「チーム状態がそんなに悪くないスタートを切れたということです。これがもうある程度見えてきたり、チーム状態が悪い時はそういう入れ替えは当然出てくる。2軍も含めて、ベンチ入りは31人ですけど、40人から45人くらいの選手で戦うっていうのが1軍にとっては必要だと。ほぼファームの試合はチェックしています」
就任会見では「美しい」という言葉でプロ意識を表現した。誰よりも勝利に真っすぐ向かうホークスに、隙は見当たらない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)