その姿には貫禄すら漂い出している。25日にZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦。今季3度目の先発マウンドに上がった大津亮介投手がまた好投した。ロッテ打線にわずか2安打しか許さず、自己最多タイの108球を投げて7回無失点。無傷の3連勝とし、防御率は1点台を切り、0.90となった。
初回を簡単に3人で片付けると、2回も3者凡退。3回1死から田村に二塁打を浴びて得点圏に走者を背負ったが、後続を打ち取った。4回も2死からソトに二塁打を浴びたが、ここも無失点。結果的に浴びた安打はこの2本だけ。危なげない投球で7回まで投げ抜いた。
この日の好投を支えたのは、日本球界でも使い手の少ない「ワンシーム」だった。「今日は右バッターのインコースに多く投げられたので、そこが良かったと思います」。真っすぐ、カットボール、スライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリット、そしてワンシームと7球種を操る大津。この日の投球データにも、その効果は表れていた。
セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータを参照すると、前回の登板だった4月14日の西武戦(ベルーナD)ではワンシームの割合は10.3%、97球のうち10球を投じただけだった。それがこの日は17.6%と、7.3%上昇した。球数にして19球と9球増えた。真っすぐ、チェンジアップに次ぐ比率で、逆にカットボールが12.4%から7.4%、カーブが6.2%から2.8%に減少していた。
今季初登板で6回1失点と好投した4月4日の対戦(PayPayドーム)でも、大津はロッテ打線を相手にワンシームを多く投げていた。この時は21.3%と真っすぐに次ぐ高い比率だった。球種ごとの100球あたりの失点増減を示すピッチバリューを見ると、この時はワンシームが「3.53」。真っすぐの「3.61」と双璧を成す数値で、ロッテ打線に有効であることが示されていた。それを活かすような登板となった。
苦い記憶も消し去りたかった。公式戦では昨年10月16日のクライマックスシリーズ・ファーストステージ第3戦以来となるZOZOマリンスタジアムのマウンド。同点に追いつかれた状況でマウンドに上がった大津は2死から岡を左前安打で出塁させ、安田に右中間へサヨナラの適時二塁打を浴びた。膝から崩れ落ちると、しばらく立ち上がれなかった。「一生覚えています」という屈辱を味わった日だった。
登板前日にも「ZOZOは去年、苦い思いしかしていないんで。悪いイメージを良いイメージに変えられるように、ZOZOが好きになるように頑張りたいです。(あの記憶は)頭から離れていないです。(ZOZOマリンは)好きじゃないです」と大津は語っていた。
悪夢を払拭するような好投に「多少は変わってきました」と語りつつ、心残りも。CSでサヨナラ打を打たれた安田が不在で「まだ安田とも対戦していないので、安田と対戦してから、ようやくじゃないですか」とも語っていた。
これでハーラートップタイの3勝目。オリックスのエスピノーザ、チームメートで公私ともに仲の良い津森宥紀投手に並んだ。「津森さんが先に2勝も、3勝もしていましたし、いつも追いかける側。また追いかける展開になるかもしれないですけど、負けずにいきたい」と茶目っ気たっぷりの大津。ローテを担う頼もしい存在になっている。