すぐさま胸に閉まった感情…山川穂高が絶叫した理由 ベンチで見せた表情の真相

オリックス戦に出場したソフトバンク・山川穂高【写真:竹村岳】
オリックス戦に出場したソフトバンク・山川穂高【写真:竹村岳】

6回にオリックス投手陣が6四死球…山川穂高は1点差に迫る中犠飛を放つ

 ベンチでの絶叫。表情が意味する感情は、なんだったのか。ソフトバンクは20日のオリックス戦(PayPayドーム)で3-3の引き分け。4時間46分、なんとか黒星からは免れた。6回の攻撃では、オリックス投手陣が6四死球と乱れ、同点に追いつく。その中で1点差に迫る貴重な犠飛を放ったのは、山川穂高内野手だった。写真のように、ベンチで見せた表情の真意に迫った。

 先発のリバン・モイネロ投手が4回3失点で降板。抜群の安定感を見せてきた左腕だが、この日は序盤から追いかける展開となった。打線も初回、2回と無死から得点圏に走者を進めるも、ホームベースが遠い。相手先発の東には、5回無失点の好投を許してしまった。6回からマウンドに上がったのは左腕の山田。3四球で1死満塁となると、柳田悠岐外野手が押し出し死球。1点を返し、山川が打席に向かった。

 ここでオリックスベンチは右腕の阿部にスイッチ。山川も「初球から行こうと思っていました」と、初球の変化球をセンターの深い位置へと運んでみせた。しかし山川は、中堅・福田の捕球を確認すると、一塁ベースの前で天を仰ぐ。ベンチに戻って座り込むと、写真のような表情を浮かべていた。一体、どんな感情だったのか。

 打ち損じだったのかを問われると「そうです」と素直に認めた。常々「打てないときって本当、ホームランどうやって打つんだっけっていう感覚になりますし、ホームランって本当にそういうもの」と語るなど、繊細な感覚と一瞬の間合いを制すことが、長打には必須。この打席を振り返っても「結果的に犠牲フライになりましたけど、あれがもし甘く入っていたりしたら、しっかりと打てる球だったと思います」と、山川にとっては“仕留めるべき球”の範囲内だったから、悔しさが表情となって表れたようだ。

 勝負の世界に“やり直し”は存在しない。山川は自らのミスショットを踏まえて「結局、これはこれで一喜一憂する場面でもありますけど」と切り出す。「基本、次(もう1度同じ場面があったとしても)どうしようとかもないので。その時はその時に悔しい、嬉しいっていうのがあって、(大事なのは)また次にリセットしていくっていうことだと思います」と、自分が打ち損じてしまったことで生じた感情は、すぐに胸にうちに閉まったと明かした。試合の中ですぐに切り替え、最後の最後まで勝利を諦めなかった。

オリックス戦で犠牲フライを放った山川穂高【写真:竹村岳】
オリックス戦で犠牲フライを放った山川穂高【写真:竹村岳】

 16日、17日の日本ハム戦(エスコンフィールド北海道)では8打数無安打も「技術の部分で修正した」と、19日のオリックス戦では3安打5打点の活躍を見せた。この日も延長12回をフルイニング出場。4打数1安打1打点と、チームに貢献してみせた。打率1割台と苦しんだ時期もあったものの、.229まで上げてきた。表情が豊かになってきたことも、山川の気持ちが前を向いてきた証だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)