小久保監督に指摘された楽天戦でのミス「自分でチャンスを消さないように」
大事な1試合を必死に、必死に戦っている。14日にベルーナドームで行われた西武戦。4-1で快勝したこの一戦でプレーボールからゲームセットの瞬間までマスクを被ったのが海野隆司捕手だった。
この日の先発は2年目の大津亮介投手。4月4日のロッテ戦(PayPayドーム)でもコンビを組んでおり、今季2度目のバッテリーだった。「大津を勝たせるということだけを意識していました。球種が多い分、いろんな球種を使いたくなるんですけど、その中でも軸となる球を決めて、それを軸に組み立てようとやっていました」。序盤から西武打線を手玉にとった。
特に威力を発揮したのはチェンジアップだった。「チェンジアップが今年は1番自信を持って投げている球でもある。その中でやっぱり違う球種もいいボールなので、それは消さないように場面場面でやっていきました」と海野。真っすぐは全投球の25%ほど。チェンジアップはそれを上回る28%超。スライダーやカットボール、カーブ、ワンシームも織り交ぜた。7回5安打1失点に小久保裕紀監督からも「海野もいいところを引き出した」と称えられた。
海野にとって2024年は大きなチャンスとなっている。春季キャンプからの競争を勝ち抜き、開幕1軍の座を掴んだ。小久保監督ら首脳陣は開幕から“捕手2人制”を敷き、将来のことも見据えた上で、開幕から“捕手併用”も実行している。海野は大津と、昨季ファームでもコンビを組んでいたカーター・スチュワート・ジュニア投手と組み、この日が4試合目の先発起用だった。
「もちろん頭から行けるっていうのは今年ずっと目標にしてきたことではあるので、結果を残さないと、そこは大事なところになるんで。でも、やっぱりチームを勝たせることに一番自分の中で重きを置いてやっています」。チームが勝つためにいかに貢献できるか。「もうめちゃくちゃ必死ですね。毎試合、毎試合っていうか、1球、1球、必死ですね」と、その言葉に力がこもる。
悔しい思いもした。スチュワートとのコンビだった7日の楽天戦(楽天モバイルパーク)では2-3で敗戦。6回無死一塁で相手のヒットエンドランを読んで投球をウエストしたにも関わらず、スローイングでミスを犯して小深田の盗塁を許してしまった。
結果的にこの走者が同点のホームを踏むことになり、試合後には小久保監督が「チャンスを与えているんで、自分でそのチャンスを消さないようにやってほしいです。せっかくウエストして外していて、あの送球とかすると、次やっぱり出番が……ってなってくるので、チャンスを自ら手放さない取り組みをした方がいいんです」と苦言を呈された。
当然、この時のコメントを海野は見ていた。「もちろん見ました。(甲斐)拓也さんっていう日本を代表する捕手がホークスではずっとやっているので、あれが普通っていうことでもある。やっぱり近づいていかないと、使ってもらえないし、少ない1試合の中でミスしてしまうと、信頼も失われる」。指揮官の言葉に、より危機感は煽られた。
目の前に立ちはだかる壁の高さは海野が一番、痛感している。「拓也さんを見ていると、ミスをしないですし、隙がないプレーが多い。やっぱり隙のないようにっていうのは意識やっています」。だからこそ、必死になる。目の前にあるチャンスを逃さぬよう、海野隆司は1日1日を過ごしている。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)