ウォーカーってどんな人? 「仏」のような真面目さ…1991年会で知った新しい一面

ソフトバンクのアダム・ウォーカー【写真:矢口亨】
ソフトバンクのアダム・ウォーカー【写真:矢口亨】

昨年11月にトレードでホークスに入団「みんなどんどん話しかけてくれた」

 新天地に移籍して、初めてのキャンプが終わった。チームの輪に溶け込んでもらおうと、多くの選手が手を貸してくれた。ソフトバンクは宮崎・生目の杜運動公園での春季キャンプを終えて、いよいよオープン戦に突入する。新しいチームでの1か月に充実感をにじませたのが、アダム・ウォーカー外野手だ。昨年11月にトレードで巨人から移籍した助っ人の人柄を、山田雄大チーフ通訳、山川穂高内野手、今宮健太内野手らの言葉から紐解いていく。

 ウォーカーは、2月28日に宮崎から帰福した。チームメートの存在を踏まえて2月について「みんな、どんどん話しかけてきてくれましたし、すごくやりやすい環境を作ってくれました。野球をやっている上で、すごくみんな明るい感じで自分にもどんどん来てくれる」と感謝する。その上で「まだ始まったばかりなので、時間をかけてどんどんみんなのことを知っていけたら」と、もっとチームメートと深い関係になれるような余地も感じているようだ。

 キャンプ中、基本的にウォーカーと行動をともにしていたのは山田通訳だった。人柄について問うと「いい人です。仏のような“ザ・いい人”ですね」と即答する。そんな一面が表れたのが2月25日の練習中、ブルペンでの出来事だった。この日は雨模様で室内練習場での練習がメインとなったため、投手の球筋を確かめるためにブルペンに足を運んだウォーカー。山田通訳に対して事前に、入念に確認をしてきたという。

「ブルペンで打席に立っていたじゃない? 『立っていいよ』って言ったら『もう1回確認してくれ』と。ブルペンとは投手が自分たちの調整をする場所であり、時間だから、俺が打席に入ることで投手に迷惑はかけたくないから『もう1回、最終確認してきてくれ』って。だから自分が和田にも板東にも聞きに行きました」

 打席に立ち、相対したのは和田毅投手と板東湧梧投手。ただ単に打席に入るのではなく、投手の練習時間であることを心からリスペクトして、山田通訳に事前に確認を求めたのだ。それも投手の細かい“温度感”まで確認してほしいとお願いされたそうで「『全然いいですよ』なのか『ウォーカーが入りたいならいいですよ』なのか。『入りたいならどうぞという感じなら俺は入らない』と言っていた」と、ホークスの通訳として18年目を迎える山田通訳すら驚く気遣いだった。

ソフトバンクのアダム・ウォーカー【写真:矢口亨】
ソフトバンクのアダム・ウォーカー【写真:矢口亨】

 同じ25日には、1991年生まれの同級生会が行われた。今宮や山川、嶺井博希捕手も「真面目」「いい人」と口を揃える。山川は「人見知りな感じがしましたけど、楽しそうにしていましたよ」と笑って振り返る。ウォーカーの打撃についても「同じリーグでやっていなくてわからないところもありましたけど、打撃練習を見ていたらすごい打球を飛ばしていますよね。めちゃくちゃいいやつだと思いますよ」と山川も驚くパワーの持ち主だ。

 プロ15年目、これまでもさまざまな外国人選手と接してきた今宮も「ナイスガイですごく真面目。優しさがあふれた外国人選手ですよね。僕も人見知りであんまり話さないですけど、しゃべり出したらすごくしゃべる感じだと思います」と言う。91年会の幹事を務めたのは嶺井。巨人時代はドレッドヘアだったウォーカーだが「その時は怖かったですけど、丸くて優しい人でした」と印象は少し変わったそうだ。

 チームは帰福して、オープン戦を戦う。ウォーカーは2日は1軍ではなく、2軍の春季教育リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)に出場する予定だ。奈良原浩ヘッドコーチも「打席数を増やすというところです。こっちは今人数がいっぱいいるので、向こうに立たせるというところ」とその狙いを語る。その時のやり取りにも人柄がにじみ出ていたと、山田通訳が明かす。受けた指示を飲むこむだけではなくて、自分からチームの一員として溶け込もうとしていた。

「その時も『外国人だから地方球場の1日は行かなくていいでしょう』みたいな感じでそうしてくれているなら、試合に出なくても俺はそっちに行くよって言っていました。そうしたら首脳陣も別の狙いがあったから『そこまで自分のことを考えてくれてありがたい』と納得していましたね」

 巨人時代も含め、NPBでのプレーは3年目となる。山田通訳が驚いたのは「一番すごいのは、今までいた(外国人選手の)中でも日本語をわかっている、しゃべるのはそうでもないけど、聞く方はめっちゃわかっている」と代弁する。ともに食事をした嶺井も「けっこう日本語の聞き取りができていてすごかったです。通訳は挟みながら(の会話)でしたけど、普通にできていました」と、テーブルを囲んだからこそ知れた一面がたくさんあった。

 その他にも栗原陵矢外野手が積極的に声をかけるなど、多くのナインが歩み寄ってくれた。ウォーカーも「変な言い方だけど、みんなに会えることが、球場に行く楽しみな部分の1つにもなりました。これからもっと時間をかけて仲良くなって、知り合えていけたらいいなと思っています」と微笑んで振り返る。新天地での慣れが必ず、チームの勝利に貢献することにもつながっていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)