若手は「正直、足りない」 “近づくなオーラ”自覚も…東浜巨が伝えたいメッセージ

自主トレを公開したソフトバンク・東浜巨【写真:竹村岳】
自主トレを公開したソフトバンク・東浜巨【写真:竹村岳】

筑後での自主トレ…育成選手からアドバイスを求められることも「意欲的」

 チームの現状を踏まえて、若手たちにメッセージを送った。足りない部分や課題もある中で、先輩として「何か協力ができれば」と頼もしく言い切った。ソフトバンクの東浜巨投手が、ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で自主トレを公開。若手や育成の選手たちに思うことを問われると、東浜らしい冷静な分析を語る。「一番は外に出ること」という具体的な提言をする一方で「そういうところは正直、足りない」とも表現した。

 近年の東浜は、各地に足を伸ばすことはあるがほとんどの自主トレを筑後で行っている。今年も近辺の宿泊施設で寝泊まりをして、連日通う日々だ。「毎年のように、自分の中でしっかりと練習できる環境がここにはある」。有原航平投手とともに、筑後で自主トレする選手の中でも実績と経験は、頭ひとつ抜けている。「僕からアドバイスすることはないんですけど、育成練習の若い子がちょくちょく話を聞きに来てくれる。意欲的に練習している印象です」と、若鷹たちから意見を求められることもあるそうだ。

 昨年末、チーム内でも育成選手に対する苦言が相次いだ。東浜にとって、昨季の最後の登板は9月7日のロッテ戦。その後に体調不良を訴えたことでシーズンを終え、秋以降は特に筑後で過ごす時間も多かった。オフとなり、若手たちに混じって汗を流している中で、育成選手の姿はどのように見えているのか。

「どうですかね。やっぱり、1軍の上でやっている選手たちと交流する機会は以前よりも減っている印象があります。どういうことをやっているのか、そもそもわからない子たちが多いと思います。もっともっと遠慮なく、先輩に声をかけてもいいんじゃないかと思います。それもなかなか難しいと思いますけど、僕ら先輩が積極的に声をかけることも必要なんじゃないですか。選手個人の問題というよりも、全体で見た時にそういうところもあると思うので、僕らがやれることはやりたいです」

「やっぱり一番はこれだけ人数もいて、環境も揃っている。育成練習という昔にはなかったこともありますし、恵まれすぎているくらい恵まれていると思う。一番は外に出ることじゃないですかね。ここだけで練習することも違うと思いますし、自分でいろんなところを探して行ってみるのもいいし、先輩にお願いしてもいい。そこは自分でやっていかないと。『先輩に声をかけられたから行きます』では身にならない。自分が本当にそう思って行動することが大事なので、そういうところに関しては正直足りないと思います」

 今年の自主トレでは緒方理貢内野手が牧原大成内野手、勝連大稀内野手や桑原秀侍投手が今宮健太内野手、前田純投手が和田投手のもとに入門した。それでも、筑後の育成練習には数十人の選手が集まり、新人合同自主トレとも午前と午後の時差で行っている。筑後というある意味“閉鎖”された環境でやるのではなく、外にも出て一流の姿勢と考えに触れることで、目指すべき道筋が明確になるのではないか、と訴えていた。育成選手たちが「どうしたらいいのかわからない」ことでなかなか足が動かず、積極性が足りていないように映る。東浜らしい冷静な分析だった。

自主トレを公開したソフトバンク・東浜巨【写真:竹村岳】
自主トレを公開したソフトバンク・東浜巨【写真:竹村岳】

 東浜も「そういう意図もありつつ、ここで練習している」と自分の背中を見せるため、若手に対しての道標になる意図も含めて筑後で練習しているという。自分自身を「あんまり僕は自分から声をかけるタイプではない。練習中、集中しちゃって“近寄るなオーラ”みたいなのを出しているらしいんですけど(笑)。それも無意識なので、自分自身も変わっていかないといけない」とも苦笑いで表現する。自分の時間に誰よりも集中しているのは確かだが、胸襟を開いて若手たちを待っていることも、伝えたかった。

 アドバイスを求めてきたのは、全て投手。木村光投手や、育成選手が数人だったという。「『フォームのことでアドバイスください』という子もいれば、試合の時の意識とか『今こうなっているんですけどどう思いますか?』とか、そういう話でした」とのやり取りで、自分なりの考えを伝えた。「僕自身も力をもらいますし、経験して言える範囲のことは惜しみなく伝えています。そういう意味では確認にもなる」と、言葉にすることで自分自身へのフィードバックにもなっている。

「自分以上に、若い子たちが自分で何を思ってやるかだと思いますので、まだまだそういう意識が薄いというか、どうしたらいいのかがわからないというのが正直なところだと思う。何か行動するのも大事ですし、そこは一番感じてほしいです。それぞれ1軍で成功している人たちは自分のものを持っているので、そういうものを感じてもらえたら。それで何か協力ができればと思います」

 昨年末の契約更改で苦言を呈した和田毅投手、牧原大成内野手らとは、また違った言葉だった。一方で確かに共通していたのは、若手たちへの期待、ホークスの将来を担っていってほしいという思いだ。2023年は6勝に終わり、東浜にとっても、もう1度居場所を築き上げるシーズン。チームの勝利はもちろん、後輩たちに何か足跡が残るような1年にしていきたい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)