現役育成選手に呈した苦言「終わってしまうよ」 “生涯ホークス”を誓った牧原大成の訴え

契約更改交渉に臨んだソフトバンク・牧原大成【写真:藤浦一都】
契約更改交渉に臨んだソフトバンク・牧原大成【写真:藤浦一都】

契約更改で明かした優勝への想いと強いチームを作るための考え

 ソフトバンクの牧原大成内野手が21日、PayPayドーム内の球団事務所で契約交渉に臨み、今季から2000万円増の年俸1億円プラス出来高払い(金額は推定)で3年契約を結んだ。これでホークスの育成選手では千賀滉大投手、甲斐拓也捕手、石川柊太投手に続く4人目の1億円の大台到達。1億円プレーにまで上り詰めた牧原大を支えたのは、滲み出る”ハングリー精神”だった。

 牧原大は今季、怪我のため辞退した鈴木誠也外野手に代わって野球日本代表「侍ジャパン」の一員としてWBCに出場。レギュラーシーズンでは主に二塁、中堅で91試合に出場し、打率.259の成績を残した。8月末のオリックス戦で死球を受けて右尺骨を骨折。戦線を離脱すると、そのままシーズン中の復帰は叶わなかった。

 リハビリ組に合流してからは筑後のファーム施設で日々を過ごした。若い選手たちと同じ空間で過ごす中で、ふと感じることがあった。「僕が伝えられる範囲で育成の選手らには、もうちょっとこういうところを頑張ったほうがいいんじゃないという話はしました」。自らのプロ人生のスタートとなった育成選手たちに、先輩としてゲキを飛ばしていたことを明かした。

 牧原大が今の育成選手たちに伝えたかったメッセージとはどのようなものだったのか。

「『あなたたちは育成選手なんだよ。もうちょっと自覚持ってやらないと終わってしまうよ』と言う話はしました。今の子たちって決められた時間でしかやっていないんで。チームで決められた練習を、育成選手が同じことをやっていたって絶対に(支配下の選手を)超えられない。自分の自由な時間を潰してでもやっていかないといけない」

 現在の育成システムが動き始めた2010年の育成ドラフトで指名されたのが牧原大であり、千賀や甲斐だった。言うなれば、3人は育成のホークスのパイオニア。明確に支配下と育成とで区別され、特に3人はハングリー精神の塊だった。“ナニクソ魂”で這い上がり、球界を代表する選手にまで成り上がった。

「プロ野球に入ってブランドものを身につけたりだとか……。そういうのって、その時じゃなくて、稼げばできるわけじゃないですか。お金が持てれば、楽しいこともできますし、欲しいものも買える。今のうちは我慢してやるのもいいんじゃないの」。苦言を呈してまで伝えたかったのは、技術云々ではなく”野球に打ち込む姿勢”だった。

 わざわざ若手に助言を送ったのは、ホークスをより強いチームにしたいからだ。順調に行けば、来季中に国内FA権を取得する予定で、来季からの3年契約をホークスと結んだ。「他の球団の話を聞いてみたいというのはありました」とも打ち明けたが、ホークスを優勝させたい気持ちが上回った。

「チームが強くなるためには、育成選手が出てくるのがいいのかなと思うので。育成選手に負けないように支配下選手も頑張る気持ちになってくると思うので、だからもっともっと育成選手に頑張ってほしいですね」と、3年間遠ざかっている悲願を達成するには、チーム内での競争と底上げが必要だと牧原大は考えている。

 現時点で、小久保監督が明言している来季のレギュラーは2人だけ。その中に牧原大は含まれていなかった。来季はセカンドで勝負し、ゴールデングラブ賞を目標に掲げる。「地元のホークスで終わりたい気持ちの方が強かった」と“生涯ホークス”を誓った牧原大。育成の先輩として、後輩たちの手本となり、チームを引っ張る存在となる。

(飯田航平 / Kohei Iida)