野球が大好きで引かれあった2人…通告日前日も共にジムに行く予定だった
ソフトバンクは28日、椎野新投手、重田倫明投手、増田珠内野手、フランケリー・ヘラルディーノ内野手、早真之介外野手の5選手に、来季の契約を結ばないことを伝えたと発表した。増田は今季が6年目。来年こそもっと高く飛んで、ホークスの主力になるつもりだった。ファンと同じく、涙で別れを惜しんだのが、育成の仲田慶介外野手だった。「昨日も自分、ずっと泣いていました。考えていたら……」――。
増田は2022年にプロ初安打を記録し、今季は35試合に出場。打率.182ながらも、しぶといバッティングと、最大の持ち味でもある明るさで、どんなところからでもチームの力になろうとした。「みやざきフェニックス・リーグ」にも参加していただけに「昨日(球団に呼ばれたのは)だったので、ビックリしたところがあって。まだ完璧には理解できていないところがあります」と、この日も戸惑いの表情だった。
2017年のドラフト3位指名だった増田と、2021年育成14位指名で入団した仲田。経歴は少し違えど、野球が大好きで、ひたむきに1軍を目指す2人の心は、自然と引かれあった。遠征先で食事をともにしても、話題は野球になる。バッティングやメンタル面、さまざまなところから互いに意見を交換し、関係を深めてきた。そんな戦友に唐突に告げられた通告。やはり直前まで2人は、一緒に練習をする予定だった。
「昨日(27日)、もともとジムに一緒に行く予定で。急に行けなくなったって連絡が来て。自分が先にジムに行って、そこで自分から電話をかけたんです。『福岡に帰ることになった』『今までありがとう』って言われて……。ジムの後もトレーニングする予定だったんですけど、ホテルを出る前に1回会いに行って。(自分からも)『今までありがとう』ってことを言って……。結構、涙が出てきました」
明るいキャラクターが増田の代名詞。その裏側まで仲田はリスペクトしており「プロ意識がすごい。身近にずっと一緒にいた中で、自分も準備を大切にするんですけど、すごく体調にも気を使っています」と代弁する。苦しい時には背中を叩いてくれて「自分が打てない時もベンチで落ち込んでる時も『声出してこーぜ』みたいな、常に明るい存在で。学ぶことも多かったです」と、何度だって助けられてきた存在だった。
26日、試合を終えてチーム宿舎に戻ってからも「一緒にご飯を食べたり、部屋にいました」という。増田に球団から電話がかかってきたのが27日の昼ごろ。「『福岡に帰る』と。“そういうこと”だからって……。『頑張って』『俺の分も頑張って』みたいなことは言っていました」。思いを託されると、涙を拭いて、増田の顔を見た。もう1度、力強く約束した。
「絶対、他球団もあるだろうし、頑張ろうって話はしました。来年一緒に1軍で、お互いに活躍したいと思っていたので。休みの日とかも一緒にジムに行ったり。『頑張ろう』とかも(お互いに)言って、常に一緒にいたから。突然、いなくなるってなって……。相当、悲しかったです。同じユニホームを着れなくなってしまって、めちゃくちゃ……。やばいです」
当然、仲田にとっても“他人事”に思えるはずがない。2024年は育成で3年目を迎えるだけに、来季に支配下を勝ち取れなければ自動的に自由契約となる。「それはありますし、本当に厳しい世界だと思いました。自分も来年3年目なので。活躍できなかったらもう終わるっていうふうに、本当に覚悟を持ってやらないといけないなと改めて思いました」と話す。何度だって言い聞かせてきたことだが、戦友の戦力外という形で突きつけられた。
自分にできる恩返しは、支配下登録を勝ち取り、1軍のグラウンドに立つこと。27日、ホテルで顔を合わせた時には「言葉が出なかったです」と、寂しさと涙だけが込み上げてきた。改めて今、増田に言葉を伝えるとしたら――。「本当に『ありがとう』っていう。感謝です」。たとえチームは離れようと、2人で努力した日々はなくならない。心からの感謝と、リスペクトを伝えたい。
(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)