「やっていることは去年と一緒」 重すぎる中村晃の言葉…“幕張の敗戦”から学ぶべきこと

ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】

2年連続で幕張での逆転負け…選手の雰囲気は一丸も「ああいう試合を毎日」

 全てが終わった時、確かに言えるのは、ホークスが変わらないといけないということだった。ソフトバンクは16日、ロッテとの「パーソル クライマックスシリーズ パ」ファーストステージの第3戦(ZOZOマリン)に敗れ、2023年の戦いが終わった。延長10回に3点差をひっくり返される、ホークスにとってはあまりにもショッキングな展開。試合後、中村晃外野手が取材に応じた。敗戦という結果以上に、チームリーダーが感じた課題とは。

 ファイナルステージ進出には勝つしかなかったホークスだったが、打線は9回を終えて無得点。延長10回2死二塁から周東佑京内野手が中前に適時打を放ち試合を動かすと、一挙に3点を奪った。しかしその裏、津森宥紀投手が藤岡に同点3ランを浴びると、大津亮介投手が安田にサヨナラ打を許した。手繰り寄せていたはずの勝利が、スルリと逃げていった。

 試合後、中村晃は2023年を「悔しいシーズンでした」と表現する。昨季も「引き分け以上でリーグ優勝」という状況で、レギュラーシーズン最終戦を迎えた。10月2日のロッテ戦、結果は逆転負け。140試合以上あるシーズン、絶対に負けられない試合を2年連続で落としてしまった。敗戦のショックも残っていただろうが、中村晃は目線を上げて、毅然とこう答えた。

「やっぱり今日の試合のように、あと一歩及ばないところっていうのをね。みんなが、全員が反省というか、忘れずに、しないといけないと思います。やっていることは去年と一緒なので。それを全員がどう感じるか。もう1回、しっかりとチームを作り直すしかないんじゃないかなと思います」

 試合には当然、流れもあれば“時の運”だってある。それをしっかりと踏まえつつ中村晃が強調したのは、必ず要因があるということ。「同じような負け方を続けて2年間やっているなっていう。惜しいとかじゃない。それを、全員がどう受け止めるかじゃないですか」。“あと一歩”だったことは間違いないが、こんなにも大事な試合を落としてしまう要因が、今のチームには必ずある。その“あと一歩”にこそ、今のホークスの課題が詰まっている。

 7月には54年ぶりの12連敗を喫した。7月23日のロッテ戦(ZOZOマリン)で敗れた後には、自身が発案者となり決起集会を開催。苦しいチーム状況を変えようと、なんとか工夫を凝らした。終盤戦の9月には、今のホークスを「強いとは、思っていない」と表現。春先にも、後輩選手に「言いたいことは言います。いっぱいあります」と話していたように、何かを変えないといけないということを、誰よりも早く感じていたのが中村晃なのかもしれない。

 2021年は打率.245、2022年は打率.253と個人成績でも苦しんでいた。その中で今年はリーグ5位の140安打を記録し、打率.274。一時は1番打者を託され続け、改めて自分自身の存在感を示したシーズンとなった。自分の数字について「納得はいかないですけど、前には進んだのかなと思います」と手応えを語る。それでも「個人的な話よりも、やっぱりチーム」と言う姿が、どこまでもチームリーダーだった。

「シーズン中にもロッテに同じような負け方をしましたし、負けるっていうことは相手よりも劣っているわけなので。1人1人がどう考えて、これからオフになりますけど、どういうふうに過ごすのかっていうので、同じようなことを繰り返すのか、勝てるようになるのか。それは僕も含めてですけど。しっかりと受け止めてやらないといけない。負けるということは理由があるわけなので」

 16日のロッテ戦、大接戦を演じるチームの姿からは、勇気をもらった。終盤戦になるにつれて、選手が一丸となっていたことは間違いないだろう。それでも中村晃は「ああいう試合を毎日やらないといけないんじゃないかなと思います」。藤本博史監督が退任し、新監督を迎え入れる2024年。心に刻まれた敗戦から、それぞれは何を感じて、どんな秋を過ごすのだろうか。

(竹村岳 / Gaku Takemura)