32盗塁も失敗5回は「多い」 周東佑京が考える“究極”…「無理矢理走る」の真意とは

ソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】

5回に二盗を決めて150盗塁に到達…歴代達成者に「少し近づけたことはうれしい」

 節目の数字に到達した。ソフトバンクの周東佑京内野手が23日のオリックス戦(PayPayドーム)で通算150盗塁を達成した。チームは1-6で敗れたものの、ファンにも見せ場を作った快足。「数々の歴代盗塁記録を持たれている方々の数字には、ほど遠い150盗塁ですが、少し近づけたことはうれしく思います」と球団を通じてコメントした。今季の盗塁に関しては“無理矢理走る”というケースがあったという。その言葉の真意に迫った。

 先発は森唯斗投手。3回に2点を奪われて逆転されると、4回にも3点を失った。4点を追いかける5回1死、左前打で出塁すると、続く今宮健太内野手の2球目に二盗に成功した。これで通算150盗塁。今季32盗塁となり、楽天の小深田と並んでいた盗塁数で、1つ抜きん出てリーグトップとなった。試合後、150盗塁という節目にも「150か、くらいです。『やった』って感じではないです。試合が終わるまで忘れていました」と淡々と話す。

 6日のロッテ戦(PayPayドーム)から1番打者としての出場が続いている。月別で見ても、9月の8盗塁は今シーズンでは最多となった。一方で、盗塁の失敗は「5」。成功率も大切な盗塁において、この数字に関してはどう受け止めているのか。

「今年は多いなって思っています。ゼロがいいので、限りなくゼロに近づけたいなって思うんですけど。けっこう無理矢理走ったりもしているので、これ以上は増やさないようにしたいなって思っています」

 キャリアを振り返ると、盗塁失敗の最多は2020年の6回だが、同年は50盗塁でタイトルを獲得しただけに“分母”が大きく、成功率.893はキャリアハイだ。成功率が一番低かったのは、2021年。21盗塁で失敗が5、成功率.808だった。1軍に出始めた2019年以降のキャリアを振り返っても今季の数字は悪くないはずだが、それでも周東は失敗が「多い」と自分に矢印を向けていた。

“無理矢理走る”という表現についても「ちょっとキツイなっていう投手の時に走ったり。ミス待ちって感じで走ったり」と続けて解説する。過去にも「自分のために走るわけにはいかない」と話していたように、決して個人的な数字を求めているわけではない。苦しい状況が続くチームの現状。上位進出のためにも、試合状況に応じて周東なりに判断をしながら、前の塁を狙っているつもりだ。

「代走で行っている時は、ほぼ100%くらいの感じで行っています。自分で出ている時は、試合の状況とか、点差が離れていたりとか。あとはやっぱり連打がキツい投手の時に『走れば何かあるんじゃないかな』って思って走ったりしています」

 盗塁における“究極”は失敗しない、成功率100%だとも言う。一方で「ゼロがいいですけど、ゼロを目指していたらこの数は走れないです。ゼロで行きたいなら20個くらいしか走れないと思うので、ミスしてもいい状況の時は行くかなって感じです」。あくまで、盗塁に失敗は付きモノ。今季の失敗数を「多い」と言えるのも、自分の走力や技術を誰よりも信じているからだ。

 盗塁が30台に突入し、次は「40」が見えてくる。残り10試合なだけに「無理だなって思います。あんまり意識しないように」と笑ったが、自分が走れればチームに勢いがつくことはしっかりとわかっている。チームは試合後、関東に移動。24日のロッテ戦(ZOZOマリン)、相手の予告先発は佐々木朗希投手だ。「朗希の場合はいかに塁に出られるかだと思う。塁に出た後よりも、どうやって塁に出るかを考えていきたい」と意気込み、PayPayドームを後にしていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)