東浜巨が抱えた「操れていない」ジレンマ…ファーム調整に「リセット」を掲げる深い意味

ウエスタン・リーグ阪神戦に先発したソフトバンク・東浜巨【写真:竹村岳】
ウエスタン・リーグ阪神戦に先発したソフトバンク・東浜巨【写真:竹村岳】

5回までパーフェクト…小久保裕紀2軍監督も「5回までは言うことなし」

 少しずつ、兆しは見えている。ソフトバンク2軍は26日、ウエスタン・リーグの阪神戦(タマスタ筑後)に6-3で勝利した。先発した東浜巨投手が7回2失点だった。ファーム調整となって2度目の登板で「落ちてきた時よりはだいぶ状態は良くなっている」と手応えを感じていた。6月14日を最後に、遠ざかっている1軍での白星。東浜の中で、どんなジレンマを抱いていたのか。

 初回、先頭の遠藤を145キロ直球で空振り三振。3者凡退で立ち上がりをしのいだ。3回2死、井坪への4球目は150キロを計測するなど空振り三振に斬る。4回、5回も3者凡退で退けた。「ちょっと高めには浮いてしまっていました」と立ち上がりを振り返る。6回に2安打、7回に3安打を浴びて1点ずつを失ったが、80球で7回を投げ切った。

 1軍での白星は、6月14日のヤクルト戦(神宮)を最後に遠ざかる。以降は6試合白星がなく、7月28日のロッテ戦(PayPayドーム)では初回に5点を失うなど3回2/3を投げて7失点で7敗目を喫した。8月5日に登録抹消。この期間、結果はもちろん、内容を見直しても、東浜はジレンマを抱えていたという。

「出力というよりは、操れていないのが一番でした。全部、甘いところに投げてしまうというか。僕が悪い時はそうなんですけど。ボールに力がないので、落ちてくるとそういうふうになってしまう」

 ストライクゾーンに“集まってしまう”ことで、弾き返されるスパイラルだったと自分なりに分析している。抹消以降の取り組みについては「体をもう一回整えるというか、うまく行っていないことが多かったので。そこを一回リセットして作り直すというところで。ゆっくりもしていられないですけど」と語る。ツーシームやカットボール、110キロ台のカーブなど総合力で勝負するのが最大のスタイル。自分の持ち味を見つめ直して、もう一度1軍の戦力になるためだけに時間を過ごしている。

 見守った小久保裕紀2軍監督が「5回までは言うことなしです。150キロも出ていましたし」と語るように、この日は出力をテーマに掲げていた。「今日はそこをテーマにしながら投げていたので。真っ直ぐに力もあって、押せている部分はありましたけど、中盤、後半は落ちたところもあったので。反省しないといけないところもあります」と本人も振り返る。取り組みも踏まえて、収穫も課題も出た内容となった。

 今季が11年目。これまでのプロ人生を振り返っても5試合登板、3勝に終わった1年目が「一番キツかった1年」と言う。ファーム調整となった今、後輩たちと同じ時間を過ごし、この日の降板後は15分ほどサインを書くなどファンサービスにも努めていた。足元も、自分自身も見つめ直している期間。かけてもらえる声1つ1つが、自分に力をくれると言う。

「雁の巣にいた時よりもファンは増えている。こうやって触れ合える機会も雁の巣の時はなかったですし、いいことだと思います。『頑張れよ』とか『ドームで待ってます』っていう声をかけられると、その声に対して応えないといけないと思いますし、前を向かせてくれる存在だと思います」

 今後については「何も知らないです」と話すにとどめた。支えてくれる全ての人のために、何よりも結果で応えたい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)