期待を上回る投球だった。7-1でホークスが快勝した23日のオリックス戦。リーグ戦再開初戦のマウンドを託された有原航平投手が役割を果たした。今季最長となる8回を投げ切り、3安打1失点。初回にソロ本塁打を浴びたものの、2回以降はゼロを並べ続け、チームを63日ぶりの首位浮上へと導いた。
初回2死から森に右翼スタンドにソロを浴びて先制点を奪われた。「首を振ってスライダーを投げてホームランを打たれた。それを反省しつつ、(甲斐)拓也のリードに助けられました」。2回以降は危なげない投球を展開。出した走者は5回の中前安打の紅林だけ。6イニングで3者凡退に封じ、8回まで1人で投げ抜いた。
7回を終えた段階で球数は97球に達していた。ここまで1軍でも、2軍でも100球前後で降板していた右腕だが、この日は続投を志願した。「3者凡退でいっていましたし、1イニングでも長くっていうのはいつも思っている。やっぱり投げていかないとイニングが増えてこないので、そういう意味でも今日はいい試合になったなと思います」。100球の壁を破り、納得の表情を浮かべていた。
レンジャーズ傘下3AからFAとなり、今季からソフトバンクに加入した。昨季はメジャーで5試合に登板し、1勝3敗。9月にはDFAとなり、マイナー降格となった。今季の開幕も2軍で迎え、交流戦に入った6月6日のDeNA戦でようやく初昇格。「本当に刺激があるというか、こういうヒリヒリしたところで投げていくことで、自分もレベルアップできると思う。先発でやりたいと思って(ホークスに)来させてもらったので、ここからまた頑張りたいと思います」。久々に味わうヒリつく戦いを味わっている。
初先発となったDeNA戦で7回途中1失点と好投すると、6月13日のヤクルト戦(神宮)では6回1失点で移籍後初白星。そしてこの日のオリックス戦での8回1失点と、3試合全てで役割を果たしている。果たして、この安定感はどこから来るのか。マスクを被る“同級生”の甲斐拓也捕手にも、有原の良さについて聞いた。
「ボールももちろんなんですけど、要所要所でコース、高さに投げ切れているところじゃないですか。あとはいっぱいいっぱいになっていない。ストライクを取ることにしてもそうですし、優位に進められているところはあると思います」
有原にとって最大の武器と言えるのが、大きく崩れないコントロールにある。ここまでの2試合は2四死球、1四死球で、この日は初めて無四球で8回を投げ終えた。ストライクを取ることに苦労することがないのももちろんだが、ここ一番でコース、高さを間違えることなく、投げ切ることができるところに、甲斐は好投できる理由を見出していた。
「高さも間違えない、コースも間違えないというところで、しっかり投げ切れている。投げミスがないというわけじゃないけど、ここっていうところでは投げ切ってくれる。右バッターの内のツーシームでも、左バッターへの内のカット(ボール)でもそうだし、落とす球もしっかり低く投げようとしてきてくれる」
投手であれば“投げミス”というのは必ずあるもの。もちろんその数を減らすことも重要だが、それ以上に求められるのは、ここ一番、試合の展開を大きく左右しかねない場面でそれを犯さないこと。その部分で有原という投手が秀でている、と甲斐は見ていた。
大事なリーグ戦再開初戦で8回1失点の好投。チームは首位に立ち、リリーフ陣も休ませることができた。「もちろんチームとして大事というのもわかっていましたし、僕自身パ・リーグに投げるのも初めてで、大事な一戦だなと思ってたのでこういう結果を出せて本当に嬉しい」。大関友久や石川柊太を欠くローテの中で、有原が頼もしい存在となっている。