東浜巨が後輩にあえて厳しい言葉をかける理由 期限迫る中で「支配下まだ?」

ソフトバンク・東浜巨【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・東浜巨【写真:荒川祐史】

支配下登録期限は7月31日…「本人のためにも、言いにくいことですけどね」

 7日に行われたDeNA戦で東浜巨投手が4勝目をマークした。7回を投げて2安打無失点と好投。12球団トップのチーム打率を誇るDeNA打線を封じ込めて、チームに白星をもたらした。

 そんな東浜が気にかける後輩がいる。自主トレをともにする重田倫明投手だ。右手中指の感染症「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」で一時離脱した右腕を「結構やばかったみたいですね。防ぎようのないちょっとしたことだと思いますけど」と複雑な思いで見守っていた。

 重田が「師匠です」と背中を追う存在。そんな東浜が重田に対して送る「支配下まだ?」というストレートな言葉に込められる真意に迫った。

 昨オフに重田から東浜にお願いして、合同自主トレを行うようになった。1月は筑後市内で一軒家を借りて、衣食住までともにする日々。東浜から学んだことを「全てです。人間的にも参考にさせてもらっています」とキラキラの瞳で語っていた。7月31日に迫る支配下登録期限を東浜も「気になりますよ」といい「彼にとってはもう時間がない。そこを自覚していれば問題ないんじゃないですか」と言った。

 東浜が1軍で登板するたびに、重田とも連絡を取る。「ピリピリの中でやっていると思うので」と後輩が気を遣う中でも「『支配下まだ?』みたいな話はします」(重田)。2018年育成ドラフト3巡目の入団から5年目を迎えた重田自身も、期待の表れだととらえている言葉は、東浜の先輩としての自覚が詰まったメッセージだった。

「結果がどうなろうと、今できることをやっておかないと。本人のためにも、言いにくいことですけど、僕はあえて言うようにしています。そこ(支配下登録という目標や期限となる日)は自覚してもらいたいし、やるだけやったと思える2、3か月にしてほしいので」

 現在のホークスの支配下登録選手は67人。残りは3枠しかなく、アルフレド・デスパイネ外野手の復帰が決まっている。期限が迫っている現実から目を背けてほしくなかった。「だから僕はめっちゃズバズバ言います」。厳しい言葉を使う姿は意外にも見えるが「本当ですか? 結構言いますよ」と繰り返した。誰しもが突きつけられるような現実じゃないのなら、自分がしっかりと伝え続けるしかない。東浜の先輩としての責任と自覚そのものだ。

 もちろん、2人の関係があるからこそ。「いきなり誰にでも言うわけではないですし、せっかく一緒にやるなら良くなっていきたい。伝え方は難しいですけど、あいつにはストレートに言っています」。プロでいられる時間は、きっと終わってみれば短く儚い。2012年ドラフトでホークスに指名された10人の中で、NPBで現役を続けているのは東浜だけ。後悔しないための1日1日を過ごしている。

「例えば現役が終わって『あの時、もうちょっとできたんじゃ……』と思うのが一番もったいない。せっかくプロのユニホームを着ている。そこに緩さなんていらないと思う」

 それは東浜が自分自身に言い聞かせる言葉でもある。今季から3年契約を結んだ。「そこは関係ないです。1年1年が勝負なのは変わらないですし、3年あると言っても、その先の保証はない。この3年で結果を残さなかったら……。逆に言えば、あと3年しかないわけで。そういう思いでやっていかないと」。油断も慢心も一切ない。いつかユニホームを脱ぐ日が来ることを、しっかりと認識しているから、東浜の言葉に説得力がある。

「終わった時に、いい意味で振り返らなくてもいい1日を過ごしたいのはあるので。何年続くかわからないですけど。僕だけじゃなくて、みんな持っているんじゃないですか」。東浜は今月20日に33歳となる。現役でいられる時間は永遠ではないからこそ、プロ野球選手は愛される。

(竹村岳 / Gaku Takemura)