泉圭輔が1軍合流へ…リハビリ生活を支えた斉藤和巳コーチからの連絡「それを励みに」

ソフトバンク・泉圭輔【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・泉圭輔【写真:藤浦一都】

「入院している期間だけじゃなくて、その後も時間がかかることはわかっていた」

 恩返しをする時がきた。ソフトバンクの泉圭輔投手が19日の西武戦から1軍に合流することになった。4月3日に登録抹消されて以来の1軍。「連投や回またぎ、いろいろ想定した中で自分のピッチングができていると思っています」。右手薬指の細菌感染症もあり、ファームで過ごした1か月半は紆余曲折の濃密な時間だった。

 出力も少しずつ戻ってきている。春季キャンプ中に投げた153キロが今季の最速ではあるが、5月16日のウエスタン・リーグのオリックス戦(PayPayドーム)でも「(球団の計測では)151キロだったみたいです」と語る。「緊迫した場面になると、出力は勝手に出ると思う。あまり気にせず、ある程度が今は出ていたら」と内容までしっかりと取り戻してきた感覚だ。

 3月31日。長い1年間を戦うと覚悟を決めるはずだった朝に、右手薬指に腫れを確認した。「『あれ?』って思ってその日は様子を見たんですけど、次の日も腫れていた」。指先だった腫れは指全体にまで広がり「リンパまで腫れました。結局、指だけじゃなかったです」。開幕3戦目だった4月2日はブルペンにも入ったが、戦える状態にないことは自覚していた。翌日の3日に「もう無理だと思ったので、自分から『抹消してください』と言いました」と明かした。

 入院生活が始まった。1日9時間も点滴を受ける日々。「仕方ないと思いながら。時間が解決するしかなかったです」と苦笑いで振り返る。「結局、何からきているのか具体的にはわからなかった」と原因はわからなかった。「入院している期間だけじゃなくて、その後も時間がかかることはわかっていた。この1か月をどう過ごすべきなのか……。焦ってもダメですし」と、もどかしさだけが大きくなっていた。

「1軍の試合は入院中は見ていましたけど、リハビリが始まったらあまり見ないようにしていました。1軍の試合を見ていると焦ってしまうし、そこにとらわれてしまってはダメだと思ったので、離れる時間を作りました。リハビリにいるからできることと言えば、1軍が試合をしている間に僕は別のことをしよう、と。自分のためになるようなことをしようとは思っていました」

 石川県にいる両親からは毎日連絡をもらった。そして「和巳さんも連絡をくださった」と、斉藤和巳投手コーチともやり取りがあったという。1軍の投手コーチから、心配してもらっていることが伝わってきただけに「ありがたいです」と感謝する。予期しなかった事態で入院することになった中で、自分を支えてくれた言葉の一部を明かしてくれた。

「抹消するってなる時が一番連絡を取っていました。その時も『早く戻ってこいよ』とか『絶対焦るな』とも言われていました。戻ってくるからには今よりも何倍も強くなって戻ってこいと言われたので。それを励みに頑張っていました」

 登録抹消となった4月3日、チームは大阪への移動日だった。「首脳陣にも誰にも会えないまま抹消になってしまった。直接ご挨拶もできなかった。和巳さんから連絡をもらって、現状こんな感じで『これくらいかかります』っていう話をして『ここからまた頑張れ』という話をしてもらいました」。自分のためはもちろん、信じてくれていた斉藤和コーチのためにも、1日も早く1軍に戻りたかった。

「手はマウンドから帰ってきたら、すぐに洗うようにしています。投げ終わったらすぐに。(5月16日のオリックス戦でも)回を跨いだ次のイニングを投げ終わったらすぐにベンチからトイレに行って、手を洗っていました。今後も継続というか、1つのルーティンみたいになっちゃうかなと思っています」

 右手を見つめて、新しいルーティンを笑う。グラウンドから離れてはしまったが、感じることができた信頼は自分をまた大きくしてくれた。たくましくなった泉圭輔が1軍に帰ってくる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)