2年ぶりの1試合3盗塁も「走ることに自信ない」 周東佑京が今も戦う実戦感覚不足

ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】

藤本監督も絶賛の周東の足「何とか塁に出れば、もう二塁打と一緒」

 ドロドロのユニホームで会見場に姿を見せた。11日の日本ハム戦で延長戦の末に4-3でサヨナラ勝ちしたソフトバンク。延長10回無死満塁から、栗原陵矢外野手の左犠飛で決勝のホームを踏んだのは周東佑京内野手だった。この日は3盗塁、2得点で勝利に貢献。栗原とともにお立ち台に呼ばれ「最終回はもう疲れていたので、(二盗は)何も考えないで本能でいきました。クリはさすがだな、しっかりやってくれるなと思いました」と振り返った。

 まずは初回だ。右前打で出塁すると、すかさず二盗に成功した。3回にも四球から二盗を決め、そして同点の延長10回を迎えた。中前打で出塁し、この日3個目となる二盗を決めた。2021年5月11日のロッテ戦以来となる1試合3盗塁。藤本監督にも「四球でも何とか塁に出れば、もう二塁打と一緒」と言わしめ、リードオフマン定着が見えてきた。

 サヨナラ劇の直前にも、冷静な判断があった。周東が10回に二盗を決め、近藤健介外野手は申告敬遠で出塁。さらに柳田悠岐外野手が中前打で続いた。ここでは三塁で止まる選択をし「(生還は)無理です、無理です。打球が速かったですし、あそこはいいスタートを切ろうとも思っていなかったので」。無死で、次打者が栗原であることを考えれば、自分に必要なのはまずは三塁に到達すること。結果的に栗原の左犠飛につながった。

 開幕して2週間が経過しても、失われた感覚に戸惑いがある。代走として期待され参加したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、終わってみれば機会なく0盗塁。準決勝のメキシコ戦ではサヨナラのホームインを果たしたが、今もなお「もうちょっといきたいですね。今はちょっと走ることに自信がない」と言うほどの状態だ。盗塁、走塁において実戦から離れるのは、どういう意味を持つのか。

「1球1球に対して、反応が鈍いなと思います。今まで走っていたのも、思っていたよりスタートが遅いものもありますし、もっと反応よくいきたいとは思っています。数を重ねて、じゃないと無理かなと思います。毎年シーズンの序盤はこんな感じだと思うので、もうちょっと頑張ります」

 感覚を取り戻すには、実戦が一番だと周東も話す。「探りながら、相手のバッテリーのいろいろなところを考えないといけないですし」と、1軍の緊張感にどっぷりと浸かりながら磨いているところだ。藤本監督は「1番(打者)で普通にやってくれれば、十分相手チームにとっては脅威じゃないかな」と周東の働きを評価し、今後の起用法も口にする。とにかくグラウンドに立つことが、今の周東には必要だ。

 1番で出場すれば後ろには近藤、柳田、栗原が控えている。「やりやすいです。言い方は悪いですけど、僕がダメでも近藤さんがなんとかしてくれる」と、信頼があるから自分も思い切って攻めることができる。周東佑京の活躍に「リードオフマン」という表現がふさわしくなってきた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)