高橋礼は昨季キャリアワーストの4試合登板…今季に首脳陣は「目の色違う」
混沌としていたソフトバンクの開幕ローテーションが固まった。最後まで競争が続いていた6番目を射止めたのは高橋礼投手。最終的には板東湧梧投手との“一騎打ち”の末に最後の椅子を勝ち取った。オフには米国のトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」で自主トレを行うなど、徹底的にフォームの改良を突き詰めてきた。オープン戦では1試合の登板に終わったが、ファームでの登板内容も含めて高く評価された形だ。
争っていた板東は3月15日の巨人とのオープン戦(PayPayドーム)で3回を無失点に抑えた。22日のウエスタン・リーグの阪神戦(鳴尾浜)でも7回1安打無失点とアピールに成功し、2人の“一騎打ち”は開幕前の最終登板にまでもつれた。まずは高橋礼が28日のウエスタン・リーグの広島戦(タマスタ筑後)で4回無失点。30日の同戦で板東は5回2失点だった。
高い領域での競争は首脳陣を悩ませた。決断は広島戦の結果次第かと思えたが、斎藤学投手コーチは「判断材料ではありましたけど、そんな単純なことではない」という。続けて「キャンプから見て2人にも状態のいい、悪いがずっとあった。その中でどっちを選ぶのか、そこまで見て考えています。キャンプからの過程も全部ひっくるめて、今回は礼にしようとなった」と説明。2月の春季キャンプからの積み重ねがあったことを、しっかりと強調した。
斎藤学コーチも、高橋礼の変化は敏感に感じ取っている。昨季はキャリアワーストの4試合登板に終わった。今季に向けても「意識の変化が大きく見えた。目の色が違っていたし、先発をやりたい意欲、返り咲かなかったらダメなんだと強い気持ちを今も持っている。その気持ちは大事にしたい」と並々ならぬ決意を汲んだ。もちろん板東の姿勢も評価しているが「変化している選手に期待したい思いがちょっと上回った」と続けた。
藤本博史監督は津森宥紀投手、又吉克樹投手の存在を踏まえ、高橋礼を中継ぎに回すと変則投手が増えることを気にかけていた。斎藤学コーチも、指揮官の考えに同調し「同じタイプを揃えて右の上手がいない状態は避けたかった」と話す。また、板東と比較して「どっちが適性があるのか、板東の方が過去にそういう経験があるので」と中継ぎの経験値も理由であることを明かした。
首脳陣は先を見据えて綿密にプランを練っている。4月は週5試合が3週も続く変則的な日程で、ローテの組み直しを強いられる。斎藤学コーチは4月最終週にやってくる6連戦を見据え「4月の下旬までに先発陣の組み替えをしつつ、またそこは競争で6人を揃える」と明かす。「そこには有原も武田もガンケルも、板東も入れてもう一回考えます」と、開幕ローテから漏れた面々の名前も挙げた。
「これから先、先発陣のバリエーションも揃えたい。試していきたいのが一番大きな理由ですね」
選択肢が多いことは、首脳陣にとっては嬉しい悩みである一方で、タクトが試されることも意味している。「僕たちはある意味では、送り出すことしかできない。判断材料を明確に選手に伝えて、純粋に、勝つためにベストな状態の選手を出していることは狂わないようにしたい」と斎藤学コーチは腕をぶした。全ては、3年ぶりに日本一になるため。先発投手の起用プランにも様々な思惑が込められている。
(竹村岳 / Gaku Takemura)