12日に今季から1200万円増の年俸4000万円で契約を更改したソフトバンクの松本裕樹投手。今季は後半戦に勝利の方程式として活躍するなど、自己最多の44試合に登板した右腕だったが、自身でも「思っていた金額よりはいかなかった」と語るように、思ったほど条件面でのアップにはつながらなかった。
8年目の今季はキャンプ中から先発ローテ候補としてアピールしながら、開幕直前に治療中の鍼が折れて体内に残るアクシデントがあって離脱。4月20日に1軍に昇格したものの、中継ぎとしてだった。そこからリリーフとして登板を続けると、6月から7月にかけて10試合連続無失点投球を記録するなど安定した投球を披露。夏場には勝利の方程式に組み込まれ、終盤はセットアッパーとして欠かせぬ存在となった。
44試合に登板して5勝1敗15ホールド、防御率2.66の成績はキャリア最高だったものの、アップ額は1200万円にとどまった。7日に契約を更改した泉圭輔投手も、後半戦59試合のうち30試合とハイペースで登板を重ねたが、現状維持の2700万円で契約を更改。こちらもやや辛口査定の印象に。なぜアップ幅が伸びなかったのか。三笠杉彦GMの言葉から探る。
契約更改交渉が終了したあと、三笠GMは松本の評価についてこう語った。
「彼の場合は中継ぎで分業する中で、ビハインドのロングであったり、回跨ぎであったりが多かった。1イニングの役割が決まっている選手に比べて負担が大きいところについて評価してもらいたい、と。アウトをとった数だけ、試合登板の数だけで査定を付けるところもあるけど、苦労も提示に表現するのは難しいところもあるので、その辺も話し合った」
「当然、どのくらい稼働して、シーズンを通して働いたら、査定のポイントは上がるという部分はあります」
松本は1軍に昇格した当初、ビハインドの展開を中心に、先発が早い段階で降板した際のロングリリーフとしての役割が主な持ち場だった。勝ちパターンとして7回を担うようになったのは、8月も半ばになってから。すでに20試合以上登板しており、今季の登板数の半分を投げていた。シーズン終盤の勝利の方程式の印象が強いが、実はそこでの登板は20試合もない。
中継ぎ投手の評価は難しい。例えば、単純に登板数で同じ50試合を投げていても、ビハインドの展開で投げた50試合と勝ちパターンで投げた50試合では査定には差が出てくるもの。また、1年間、離脱なく1軍で投げ続けることのできた選手は評価が高くなってくるという。
現状維持だった泉で言えば、今季は7月下旬に1軍に昇格し、そこからはビハインド、リードの展開問わず、便利屋的に30試合に登板した。ただ、登板の状況で言えば、査定の上がりにくいポイントだったのは否めない。シーズンを通して1軍で投げていたわけではなく、しかも、昨季、一昨季と比べれば、登板数も、その他の成績も落ちており、その辺りも影響したのかもしれない。
「難しいところは、かつてよりなるべく選手のコンデディションを考えて、回跨ぎをしたら何試合か休みにしたり、固定的に決まっていたところも流動的になってきている。60試合より40試合だと査定のポイントは多くならないけど、それが能力によるもので登板が抑えられていたわけではなく、登板数をローテーションさせて少なくなっているのをどう考えるかは我々は苦労している部分。そういう意味で頑張ったイメージと評価が差があったかもしれないけど、評価として難しい部分がある」
三笠GMはこう語り、松本や泉から要望のあった中継ぎ投手の起用方法への変化や“目に見えない部分”への評価の難しさを認める。思いのほか、条件面のアップのなかった松本。そこにはシーズン中の稼働期間や起用された状況といった査定のポイントの違いがあるようだ。