ポテンシャルがなかなか花開かずにいる。鳴り物入りでソフトバンクに加入し、早くも4年目。今季はここまで1軍登板なし。2軍では12試合に登板して2勝4敗、防御率2.64の成績を残しているものの、1軍からなかなかお呼びの声がかからないでいる。
2018年の米ドラフトでブレーブスから1巡目(全体8位)で指名されたカーター・スチュワート・ジュニア投手のことだ。今季は腹直筋の炎症で出遅れ、2軍戦初登板は5月26日のウエスタン・リーグのオリックス戦。その後は1軍の事情による中継ぎテストも挟み、12試合に投げている。
スチュワートの課題の1つはコントロール面にある。前回登板だった8月30日の阪神戦では5回途中で6四球。ここまで直近4試合連続で4四球以上と、四死球の多さがやはり際立つ。今季自身最速の159キロをマークするなど、ストレートの威力、鋭く曲がるカーブなどボール自体の力は一級品だが、それを操れないでいる。
課題がなかなか解消されない状況に、小久保裕紀2軍監督はスチュワート・ジュニア本人との面談して考えを伝えた。右腕の意識の変化は指揮官も感じ取る。6四球を出した阪神戦後にも「低めに意識して投げようとするのはもう全然変わりました」と認める。
ただ、これ以外にも課題は山積しているのが実情だ。阪神戦では球数が100球に近づくと、球速が落ち、ボールも浮き出した。小久保2軍監督も「100球ぐらいで球がもう全然、行かなくなってるよね。外から見ても分かるでしょ? 急に抑えが効かなくなったし。でも、先発で回るなら、100ちょっとぐらいでヘバってたらね」とスタミナ面の不安を口にする。
また、セットポジションのクイックやフィールディングの面もまだまだ物足りなさが残る。「クイックのレベルも4年経ってまだあのレベル。1軍で、2死から走者を出しました、(クイックが)1.35秒ぐらいですから、普通にスチールされました、タイムリーで1点という典型的なパターンになる。やっぱり怖くて使えないと思うんですね」と小久保2軍監督。1軍ではこうした隙が命取りになる。
持っているボールの威力は一級品。ただそれだけでは、1軍の戦力にはなれないというのが現実だ。「やっぱり球が速いだけでは、なかなか1軍もカーターいけるかというふうに言ってこないと思う。こっちからも『いけます』と言えないですしね」というのが小久保2軍監督の評価だ。
新型コロナの陽性者が続出し、台所事情が苦しくなった時でもスチュワート・ジュニアに1軍昇格のチャンスは巡ってこなかった。小久保2軍監督も「もう4年目なんで、逆指名的なので来てるわけですからね。この状況で1軍に呼ばれないっていうのは、我々も危機感を持って接していかないといけないと思っています。球団はそこに先行投資してるわけですからね」と危機感を募らせる。
2019年の入団時に結んだのは6年契約で、年俸総額700万ドル(約7億7000万円)とされている。今季で4年目となるが、1軍登板は2021年の11試合のみ。まだ初勝利もマークできていない。米ドラ1右腕の現在地は厳しいものになっている。