徐若熙は「本物」か 独自データで探る可能性…NPB4位相当の驚異的スタッツも不安は“量”

CPBLでは驚異的な奪三振能力を見せる25歳右腕

 2026年シーズン、パ・リーグ3連覇と2年連続の日本一を目指すホークスだが、このオフは2年連続で最多勝を獲得した有原航平投手がチームを去ることになった。盤石な救援陣に比べ、先発陣はそれほど図抜けた戦力を保有しているわけではないだけに、有原退団の“穴”を不安に思うファンも多いはずだ。

 ただ、ホークスフロントは有原の“穴埋め”として、「台湾球界の至宝」と称される右腕・徐若熙(シュー・ルオシー)投手を獲得した。3年総額で15億円以上ともされる大型契約で加入した25歳。果たして徐はこの契約額にふさわしい投手なのだろうか。そして有原不在の穴を埋められるのだろうか。日本と台湾両方でプレーした投手の成績を参照しながら、活躍を占ってみたい。

 まず徐がどれほどの実力を持った投手なのか。台湾リーグ・CPBL内での成績を見ていきたい(表1-1)。

 徐はそもそも、台湾内で極めて大きな期待を受けてプロ入りした投手だ。高校時代に最速153キロをマークすると、2019年7月に行われた台湾のドラフトで1巡目指名を受けた。入団後すぐに故障で苦しむも、デビューした2021年にはプロ初登板で対戦した11打者全員を三振に打ち取る衝撃のピッチングを披露。1年目から81イニングを投げて防御率3.11を記録すると、昨季は114イニングを投げて防御率2.05。5勝7敗と勝敗こそ振るわなかったが、素晴らしいパフォーマンスを見せた。

 守備の影響を受けず、投手の能力が反映されやすい奪三振、与四球の割合から投球のパフォーマンスを見てみると、K%(奪三振÷打者)は毎年30%前後を記録。ほぼ打者3人に1人というペースで三振を奪う凄まじい奪三振能力を見せている。昨季のNPBでこのレベルのK%を記録した投手は存在しない。2011年にシーズン276三振を奪ったダルビッシュ有投手(当時日本ハム)で31.2%だったということを考えると、CPBLにおける徐の奪三振能力の凄まじさがわかるだろう。

 また、注目したいのはBB%(与四球÷打者)の低下だ。昨季の徐はBB%で3.3%を記録。それまで1年を通して稼働したシーズンでは7.5%ほどだったが、昨季は奪三振能力を維持しながら、さらに四球を減らしてみせた。奪三振と与四球の観点から投手の総合的なパフォーマンスを表現するK-BB%[1]でみると、昨季の徐の値は24.7%を記録している。

 この徐の成績はCPBLの中でどの程度の位置にあったのだろうか。昨季のデータを見てみると、やはり彼の投球が圧倒的だった様子がわかる。昨季CPBLで100イニング以上を投げた投手の中で見ると、徐の24.7%は1位。2位の威能帝の値が20.5%。3位以下も15%前後であることを考えると、やはり徐は突き抜けている。防御率や勝敗で見ればCPBLの中で抜けているというわけではないが、投手としてのパフォーマンスで見ると、他の存在を完全に圧倒していると言える。

2025年のNPBで4位相当の換算成績…有原の穴を補ってあまりある活躍の可能性も

 しかし、CPBLでの素晴らしい活躍は、多くのホークスファンもわかっているはずだ。問題はそのパフォーマンスがNPBでどれだけ通用するかだろう。近年でもNPBで戦力外となった選手がCPBLで活躍するケースは一定数ある。その事実からも、CPBLでの実績がどれだけ当てになるものなのかと思う人も少なくないだろう。

 では実際に、CPBLとNPBをまたいでプレーした投手の成績はどれほど変化しているのか。そのデータを参考にすることで、徐のパフォーマンスを推測できないだろうか。

 最もわかりやすい例は、昨季日本ハムに加わり、初年度から大きなインパクトを残した古林睿煬投手だ。古林はCPBL時代の直近2年(2023~2024年)でK%が24.9%、BB%は5.3%を記録した。これがNPBに移籍した昨季はK%が25.0%、BB%は6.6%という数字である。奪三振の割合はほぼ変わらず、四球がやや増えたという結果だった。

 ほかにもNPBでプレーし、CPBL入りを果たしたチェン・グァンユウ(元ロッテ)、郭俊麟(元西武)、吉田一将(元オリックス)についても、NPBでの直近とCPBL移籍後のそれぞれ2シーズンの成績を比較した[2]。すると、やはり全体的にもCPBLとNPBでK%はそれほど大きく変わらないものの、BB%はNPBで一様に悪化する傾向が見られた。三振を取る割合はそれほど変わらないが、四球は増加するというわけだ。このあたりにリーグ間のレベル差が表れている。

 ここまで見てきた4投手の移籍前後での成績の変化[3]から、徐の今季の成績を予測しよう。こちらも直近2シーズンの成績から推測を行う。さきほどの4投手の成績変化から換算すると、徐のK%は直近2シーズンで28.7%だったが、これは今季28.9%になる見込みだ。三振奪取能力はほぼ変わらないという予測となる。一方でBB%は5.3%から8.3%に悪化する見通しとなった。NPBのレベルの高さを考えれば、やはりCPBLと同じようにはいかないだろう。しかし、それでもそれほど劇的な成績悪化ではない。

 この三振、四球のパフォーマンスが昨季のNPBでどのレベルにあたるかを見てみると、以下のようになる(表3)。2025年に100イニング以上を投げた投手を対象としたK-BB%ランキングだ。

 これを見ると徐のNPB移籍後の20.6%というK-BB%の予測が、NPBでも屈指のレベルにあることがわかる。昨季NPBトップのK-BB%を記録したのが宮城大弥投手(オリックス)で22.0%。2位に続くのは伊藤大海投手(日本ハム)で20.8%、3位が今井達也投手(当時西武)で20.7%。徐の20.6%という予測数値は、昨季100イニング以上をクリアしたNPB投手47人のランキングの中に入れても4位相当ということになる。ちなみに5位はリバン・モイネロ投手(ソフトバンク)。台湾での実績を日本のレベルに換算したうえでもなお、徐はトップクラスの投手であることがわかる。

 1点気になるとすれば、稼働の「質」ではなく、「量」だろうか。徐は昨季の114イニングがキャリア最多。稼働量が増えたときに投球の質がどう変わるかという懸念点はある。特に比較対象になるのは毎年200イニング近くを消化していた有原だ。量の面で貢献不足が露呈する可能性はありそうだ。

 NPBでは過去に、韓国や台湾で名の知られた選手が来日するも、当初の期待通りの結果が出ないまま退団したというケースが少なくない。おそらくファンの中にもそうした例を思い浮かべて不安を覚える人もいるだろう。しかし、この徐については台湾での実績からしても凄まじい実力を持っているのは間違いないように思える。有原の穴を埋めるどころか、うまくいけばそれを補ってあまりある活躍を見せる可能性も十分にありえるのではないだろうか。

[1]K-BB%:奪三振と与四球の頻度から投手の総合的なパフォーマンスを測る指標。K%-BB%で求められる。
[2]たとえば郭俊麟でいうならばNPB直近2シーズンにあたる2018-19年の成績と、CPBL移籍直後2シーズンにあたる2021-22年の成績を比較している。
[3]3投手の成績変化の差分から中央値をとることで、成績換算の見込みを求めた。

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する「1.02 Essence of Baseball」の運営、メールマガジン「1.02 Weekly Report」などを通じ野球界への提言を行っている。(https://1point02.jp/)も運営する。