ハワイの朝6時、周東佑京が向かう場所「家族が起きる前に」 日本一の余韻も…求める“強さ”

インタビューに応じた周東佑京【写真:荒川祐史】
インタビューに応じた周東佑京【写真:荒川祐史】

9日からチームは優勝旅行に

 1年間の厳しい戦いを勝ち抜き、日本一を達成した喜びが表情ににじみ出ていた。リーグ優勝こそ果たしたものの、日本シリーズでは悔しい敗戦を喫した昨季。周東佑京内野手は、1年前とは違った気持ちでハワイでの優勝旅行を楽しんでいるという。

「(去年も)とりあえず(ハワイに)来ましたけど、なんかちょっとモヤモヤも残りながら……。そんなに清々しい思いではなかったですね」

 だが、今年は違う。悲願の日本一を掴み取り、一点の曇りもない充実感が漂っていた。「スタッフの皆さんも、家族の皆さんも、いい気分で来られているのかなと思います」。選手をサポートしてくれた人々への感謝を口にした周東だが、南国で求めているのは単なるバカンスだけではない。「(ハワイに)来たら楽しいんですけど、結局は……」。笑みを浮かべつつも、その思考はすでに“戦闘モード”へと切り替わっていた。

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続きの内容は

周東を奮い立たせた栗原陵矢の“姿”
近藤健介にはない、周東が狙う“本数”
来季の目標「試合に出続ける」ために必要な“こと”

早朝6時からのトレーニング

「もう(来年を)考えながら練習も進めているので、色々と考えています。朝、6時に出発して、家族が起きる前にウエートを終わらせるみたいなイメージで。去年、クリ(栗原陵矢)がそんな感じでやっていたので。いいなと思って」

 昨年の優勝旅行で栗原陵矢内野手が見せたストイックな姿勢に感化され、今年はトレーナーや上沢直之投手とともに負荷をかけられるジムへと足を運ぶ。視野に入れているのは、チーム内の猛者たちだ。首位打者や最高出塁率といったタイトルへの意識を問われると、苦笑交じりにこう語った。

「コンさん(近藤健介)って、やっぱりフォアボールが多いんで。そんなにめちゃくちゃヒットを打つチャンスは逆にないんじゃないかと思って(笑)」

 多くの四球を選ぶ近藤健介外野手や柳町達外野手とは違う“土俵”に立っていることを自覚する周東。自身が目指すスタイルは「(ヒットの)本数をしっかり稼ぐ」ところにあると分析する。
 
「運も実力のうちって言うじゃないですか」。今季は怪我がなければタイトルを狙えたのではないか――。そう問われると、静かに否定した。「実力がまだなかったっていうだけのことかなと思います」。“タラレバ”に逃げない強さと潔さ。その現実を直視できているからこそ、来季は「試合に出続ける」という目標が、重みを持つ。

「今のところは、そんなに野球において高い強度でやっていないので。トレーニングの面ではそんなに心配はしなくていいのかなと思います。でも、ふとした時に『痛い』まではいかないですけど、変な感じがする時はあるので。それをシーズンが始まるまでにどう取り除いていけるかだと思います。まだまだ時間はあるので、そこはできそうな雰囲気はありますね」

 怪我に苦しんだ今季とは違い、不安要素を1つ1つ取り除いていく。日本一の余韻を楽しみつつも、もう来季に向けた戦いは始まっている。家族との穏やかな時間の裏で、密かに爪を研ぐスピードスター。ハワイの陽光の下、周東佑京は一回り強くなろうとしている。

(飯田航平 / Kohei Iida)2025.12.11