今季から“後輩”も…チーフの立場になり抱く思いは
ソフトバンクは13日、ロッテ戦(ZOZOマリン)が雨天中止となりました。室内練習場での調整を終えて、ナインは帰福。敵地での1週間は4勝1分けに終わりました。開幕して13試合を消化。今季から「チーフ」の肩書きを背負うようになった西田哲朗広報は、チームの戦いをどのように見守っているのか。背筋が伸びる小久保裕紀監督の言葉、深みが増す今宮健太内野手の存在……。裏方さん目線で、心境を語ってくれました。
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今年から、現場のチーフになりました。自覚はより強くなっています。(小久保裕紀)監督が去年1年間、「プロとして」ということは言ってこられたと思います。他の人の仕事まで含め、全部自分の責任になってしまうという気持ちがありますね。細かいところまで、注意を払って、マスコミの皆さんにもうるさいことを言っているかもしれませんが……。チームを守る意味でも、情報を管理しないといけないですから。
今だと、鍬原(拓也広報)と一緒に仕事をするようになりました。彼には彼の良さがあって、動画をメーンにやってくれていますけど、選手のいいところを引き出してくれています。だからこそ動画においても、これを出していいのか、いけないのか、僕も考えて管理、判断しています。全てがプラスじゃなく、マイナスに映ってしまう時もあるので、そういうのは意識して見ていかないといけない。
アップされる動画は僕も目を通します。鍬原なりの判断もあるし、プロとしてやってきた感覚はわかってくれていると思います。その中で、僕はやっぱり細かいところまで見てしまいますね。マイナスなところって、1個もあってはならないんですよ。100点で初めて評価されるし、選手のためにもなる。いいことを重ねても、悪いことは目立って指摘されてしまうので。僕にも1年目という時期はありましたけど、重田(倫明広報)も含めて、それぞれがいいところを出していけたらいいですね。僕たちはプロの集団で、違う色が必ずあるので。
小久保監督のインタビューから感じること「だからチームが」
チーフにもなったことで監督、そして城島(健司CBO)さんの取材にも立ち会うようになりました。お言葉にたくさん触れることで、僕自身も勉強させてもらっています。組織のトップ2人のお話は、細心の注意を払って準備をしないといけない。1日1日、監督が話す場までに100%の力を振り絞って、僕も準備して作っていかないといけないと、背筋が伸びる日々です。
その話を聞いていると「だからチームが組織として機能しているんだ」と感じます。王イズムの継承があると思うんですけど、僕もインタビューに立ち会っていて、勝手にですけど、「僕に聞かせてくれているんじゃないかな」と思ったりします。監督は奥が深いので、1つの言葉にストーリーが眠っている。「先の先を読め」と言われていますけど、僕らの仕事は1つのミスも許されないですから。組織をよく「卵の殻」に例えているんですけど、殻の部分が僕たち広報。失敗してしまうと中身が出てきてしまうし、組織を守る仕事なので。
テレビ、新聞社、ウェブ媒体の皆さんと、いいインタビューをお互いにしたいですよね。選手のいいところが、より届いていくように。だから僕としても「この質問は適しているのか」と、こういうことを聞いた方がいい部分が引き出せるんじゃないかというのは常に考えています。コメント1つにしても、選手が伝えたいことを伝えるのが僕たちの仕事。話していることもフィルターをかけたり、そういう細かい調整は日々しています。ホークスはありがたいことに、取材は多い球団なので。「そこは当たり前に思ってほしくない」というのは選手にも伝えています。
今宮健太とは同学年…心を許すからこそ意外な“あだ名”
選手に焦点を当てると、僕は今宮と同級生です。本当に深さが増しているなと感じますね。チームを支えるという中で、彼の発言には重みがある。開幕にも間に合って、結果も残しているじゃないですか。改めて存在感を感じますし、“まとめる発言”ができる選手ですね。僕はいつも「大分県知事」と呼んでいます。知事みたいなスピーチをしてくれるので、年々、インタビューの精度も上がっているのかなと。
現役だった時は(楽天時代は)同じショートストップで、塁上で試合中に会うこともありました。同級生でライバルと思っていたんですけど、それが恥ずかしくなるくらい、彼はすごい考えを持ってプレーをしています。今年がプロ16年目ですか。本当に凄いことだと思います。選手それぞれの言葉がある中で、今宮は全部が深いです。監督もそうなんですけど、言葉1つでその場を作っていくじゃないですか。聞く人との間に“勘違い”が生まれないように。今年で広報5年目になりますが、その思いは今も変わらずに持っています。
ファンの方々は本当にすごいところまで見てくれています。何度も言いますが、だから僕たち広報は注意をしないといけないです。僕は最近、ビジターのヒーローインタビューを見ていないんですよ。同じ時間、試合後は監督の囲み取材に立ち会っているので。そしたらファンの人に「グラウンドはもう来ないんですか?」って、聞かれたこともあったんです。試合前に写真も撮っているし、僕が来ていることは知ってくださっているんですかね。
ファンの方にとっては“見ることができる場所”というのは大切だと思います。そこから情報を得ていると思うので。ありがたいことなんですけど、僕は目立ったらダメな仕事。ミスが出た時に名前が出るのは僕なので、そうならないように。今年もプロの気持ちを持ちながら、シーズンを追いかけていきたいです。
(竹村岳 / Gaku Takemura)