11日に嶺井が初打席で同点呼び込む安打
不穏な空気が漂う中、ベテランの“準備”が光った。11日のロッテ戦(ZOZOマリン)。途中出場の嶺井博希捕手は一時同点に追いつく貴重な安打を放ち、守備では二盗を阻止する強肩を披露した。この日、柳田悠岐外野手が負傷交代。嫌なムードを払拭し、勝利をもぎ取った。
甲斐拓也が抜けた今季、正捕手争いは横一線のスタートだった。オープン戦では1軍に同行していたが、渡邉陸捕手らの台頭もあり開幕を2軍で迎えた。決して悔しさがないわけではなかった。それでも2軍で9打数4安打と気を吐いて、10日に1軍昇格を果たした。
「たまたまです。振ったらいいところに当たったので」。11日の試合後、本人はそう謙遜していたが、首脳陣が絶賛する準備があった。
随所に嶺井の活躍が光った試合だった。逆転を許した直後の8回1死、代打で出場し、今季初打席の初球を右前に運んだ。二塁まで進むと今宮健太内野手の中前打で生還。さらにその裏の守備では無死一塁で代走の和田の二盗を阻止。ガッツポーズを見せた。
チームはこの日、柳田が右すねに自打球を当て途中交代。先制こそしたが、その後はなかなか好機を作れず。一時逆転を許し、重苦しい雰囲気が漂っていた。そんな中での一打だった。9回には再び追いつかれた直後、ロベルト・オスナ投手の元へ。「スペイン語わからないので呼んだだけです」と言いつつも、「間を取りたかった」と満塁のピンチを抑え、延長に持ち込んだ。
当初、チームは捕手2人体制を敷く予定だったが、急遽昇格。高谷裕亮バッテリーコーチは「ベテランなので、鑑になってもらわなきゃいけない」と期待する。その中で、評価したのは準備の面だった。
「自分が試合に出ていなくても出ているように試合の流れを感じたりとか、頭の準備、体の準備がキャッチャーには必要なので。そこを常に目を光らせているってところじゃないですかね。だからいつでも『行ってくれ』って言ってすぐに行けるんだと思います」
スタメン起用ゼロも「困った時のベテラン」
ここまでスタメン起用ゼロ。7日に谷川原健太捕手が抹消されて以降、海野隆司捕手が4試合でスタメンマスクを被り、渡邉が10日の京セラドームで行われたオリックス戦で延長12回までフル出場した。嶺井自身の出番は少ない中でも、後輩に声をかけながら、試合前の準備を進める。
チームは近藤健介外野手、栗原陵矢内野手に加え、柳田も骨挫傷で1か月の離脱を余儀なくされた。高谷コーチも「困った時のベテランの力、存在感は若手にとっても刺激になる」と話す。嶺井自身も「自分にはどうすることもできないので。変わらないです。自分は自分で準備をして備えると言うのが大事かなと思います」。変わらぬ姿勢がチームの窮地を救う。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)