7回無失点の東浜巨でも「ギリギリ」 若手に見せた現実…示した1軍との境界線

ウエスタン・リーグの広島戦に先発した東浜巨【写真:竹村岳】
ウエスタン・リーグの広島戦に先発した東浜巨【写真:竹村岳】

昨季も春先に好調…あえて比較して語った“違い”

 ソフトバンクの東浜巨投手が9日、ウエスタン・リーグの広島戦(タマスタ筑後)で先発登板。7回を投げ2安打無失点と、チームを勝利に導いた。圧倒的な内容は、若鷹にとっては厳しい“現実”でもある。1軍を目指していく選手たちが、乗り越えなければならない課題が見えた。

 初回には、この日最速となる149キロを計測。4回を終えた時点では、走者を許していなかった。5回には失策と安打で1死一、二塁とされたがラミレスを二ゴロ併殺。7回にも2本目のヒットを浴びたが、遊ゴロ併殺で切り抜けた。「80球前後と6イニング」をメドにした登板だったが、74球で7回まで投げ切った。

 オープン戦では2試合に登板して防御率1.50。春先から好調は維持しており、東浜も「感覚的に良かったです。出力だけじゃなくて、試合を重ねるごとに自分がイメージするいいラインが出てきています」と納得した表情だ。打者との間合いや、カバーリング1つを取って見ても、最後まで集中力を欠くことはなかった。東浜にとっては、枠を奪いにいくという最大のアピールでもあった。

「僕の中はもうシーズンに入っているつもり。1軍を想定してきょうはいきましたし、1日1日全力を出していきたいというのはあるので。どこに所属していようが関係ないですし、その積み重ねできている感じです」

 開幕ローテーションに入ったのは5人。この日、1軍のオリックス戦(京セラドーム)では6人目の大津亮介投手が先発した。出番を待つ立場になったが「1軍、2軍は関係ないですし、1軍を見据えてやることは変わらないです。1人1人のバッターに対して、しっかりといくつもりでやってきたので。どういう状況になろうが1年間、徹底していきたいと思います」と言い聞かせる。投手陣ではチーム最年長の34歳。当然なのかもしれないが、その存在感は群を抜いているように見えた。

東浜巨【写真:竹村岳】
東浜巨【写真:竹村岳】

2軍指揮官「ええ勉強になったんじゃないですか」

 松山秀明2軍監督も「完璧、100点です。打たれる気がしなかった」と大絶賛。まさに“1軍レベル”という投球を見守った。「結果がそうなっていますから。ボールのキレ、コントロールを見てもバラけていない。自分たちのチーム(2軍)だとトップレベルでした。他の投手と比べても、はるかに安定感がある」。見せつけた格の違いは、目を背けてはいけない現実も意味していた。指揮官が言語化する。

「それくらいいって、やっと1軍で勝負できるわけですから。巨も、言うならうちの枠ではギリギリのところにいる選手。みんな(若手は)、ええ勉強になったんじゃないですか。そういう感じ方をしてほしいです。巨はいい投手ですからね、(自分たちファームも)現実を受け止めながら向き合っていきたいです」

 競争に入ろうと思えば、これだけ圧倒したものを見せなければならない。チャンスを待つ東浜が体現した投球こそ、若鷹にとっては1軍との“境界線”だ。右腕自身も「操れていない変化球がなかったと思います」と頷くほど。4三振のうち、2つはチェンジアップで記録した。春季キャンプから磨いてきた球種で「右左(バッター)、どちらからも取れたのはよかった。投げミスもありましたけど、しっかり意識はできました」と、前向きな課題ばかりが見つかった。

 昨シーズンは、オープン戦で15回1/3を投げて無失点。「感覚的には初めてかもしれない。だから怖いです」というほど、順調な仕上がりぶりだった。春先という時期を比較しても「一時のピークでいえば、去年の方が上かもしれないですけど。今年に関してはトータルで、しっかりとした自分の1週間の過ごし方ができています」と表現する。「去年は状態を維持するのに必死でした。今年は状態を作るのもそうですけど、その日に合わせた投球ができている。いろいろと気づくことがある」。34歳にして見せる上積みだ。

 今後も1軍の管轄で動いていく予定。「1年間長いので、この状態をさらによくして、キープすることが大切。修正しながら次の登板にも備えていきたいです」と語った。1軍の勝利に貢献すること。信念を胸にマウンドに立った東浜の姿は、最高のお手本だった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)