支配下は残り5枠…育成は「物足りない」 首脳陣が指摘も、絶賛した24歳「1軍で勝負できる」

佐藤航太、山本恵大、宮崎颯、大友宗(左から)【写真:冨田成美、竹村岳】
佐藤航太、山本恵大、宮崎颯、大友宗(左から)【写真:冨田成美、竹村岳】

小笠原孝コーチを直撃…捨ててほしい“仕方ない”

 支配下選手65人でスタートした2025年シーズン。育成選手は支配下登録のリミットとなる7月末までに「5枠」を争うことになる。ウエスタン・リーグが開幕し、間もなく1か月。2軍本隊もシーズンを戦う中、3桁を背負う選手たちはどのように評価されているのか。投手陣の“チーフ”は、「物足りない」と断言した。

 現状を整理してみると、野手で昇格の「筆頭候補」は山本恵大外野手だろう。ここまで打率.471、2本塁打、8打点をマーク。一時期は打率が6割を超えるなど、春先から好調を維持している。その他では大友宗捕手、佐藤航太外野手らが2軍に帯同しながら、虎視眈々とチャンスを狙っている。投手では宮崎颯投手、川口冬弥投手、大竹風雅投手らがしのぎを削っている。50人以上の育成選手がいるのだから、5枠は非常に狭き門だ。

 2軍は8日、ウエスタン・リーグの広島戦(タマスタ筑後)に5-4でサヨナラ勝利した。試合後、小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)が語ったのは「物足りない」という育成選手たちの現状だった。

「まだ物足りないですね、全然。育成ですけど、支配下登録を勝ち取るっていうガツガツさが足りないし、もっと出してもらっていいと思います。『育成だから仕方ない』ではなくて、支配下になったらあの強力な投手陣に入れるように。今の自分たちで、入れますか? ということですよね。それを考えていれば、自然と行動も変わると思います」

 全体練習は足並みを揃えてメニューを消化する。「自分だとユニホームを着ていたら(自分の背番号が3桁だと)わからない。みんな一緒に練習しているし、もっと高いレベルでやってほしい」。協調性はもちろん大切だ。その中で、支配下の選手たちと同じ行動を取るのではなく、飛び抜けるほどの意識を見せてほしいというのが首脳陣の願いだ。そしてそれは、現状では誰からも感じられていないという。

小笠原孝コーチ【写真:冨田成美】
小笠原孝コーチ【写真:冨田成美】

9回に木村光が悪送球…ミーティングで伝えたこと

「ただやみくもにやればいい、というものではないですし。でも、やっぱり足りないですよね」。この日の広島戦、9回に登板した木村光投手は無死二塁からバント処理で三塁に悪送球。一時逆転を許す展開を作ってしまった。「きょうもミーティングで話したのは、失敗してからでは遅いということ。きょうはたまたま光だったかもしれませんが『じゃあ普段からやっているのか』という話です。それも評価ですから」。試合の結果だけではない。首脳陣は日々の練習から目を光らせ、選手たちの“序列”を頭の中で描いている。

 そんな中、小笠原コーチが評価したのは左腕の宮崎だ。ここまで4試合に登板して7イニングを投げ無失点。140キロ後半を計測する直球のキレで、この日の広島戦でも1回無失点に抑えた。「きょうなんかは、僕が見てきた中では一番真っすぐがよかったですね。1軍でも勝負できるボールでした。きょうのボールだと全然できます」と大絶賛だ。プロ野球選手なのだから、調子を維持することも重要な仕事。ただ、現状では「勝負できる」だけの球を投げていることは確かだ。

 打率.471を誇る山本は2安打2打点の活躍。9回2死一塁では同点となる適時三塁打を放った。4月1日以来の安打に、安堵の表情を浮かべた。近藤健介外野手が腰の手術で戦列を離れている今、外野手にとっては最大のチャンスだ。「ここで突き抜けないといけないです。7月になったら、僕より他の選手の調子がいいかもしれないし。ずるずるいきたくないです」。優しい笑顔から、信念があふれる。「めっちゃゴミとか拾っています」と、生活の細かい部分から丁寧に過ごしているところだ。

 2024年は8枠を空けて開幕した。昨年9月の時点で、三笠杉彦GMも「来年(2025年もスタートが)も62人かと言われたら、それは当然、育成の有望株がどれだけいるかというところです」と言及していた。3桁と2桁の力量を見極めるのは、首脳陣とフロントの共同作業だ。2軍で戦う選手たちの明暗も、少しずつだが分かれてきた。貴重な1枠を勝ち取れるのはきっと、野望を胸に、結果を残した若鷹だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)