海野からかけた言葉「ここでゲッツーがほしい」
一瞬で、呼吸を合わせた。かけた言葉は「ゲッツーを狙いましょう」。ソフトバンクは6日、西武戦(みずほPayPayドーム)に11-1で勝利した。先発の上沢直之投手が6回無失点で、新天地で初めての白星を手にした。お立ち台で明かしたのは、海野隆司捕手とのやり取り。「海野と『ここでゲッツーがほしい』という話をしていた。理想通りの形になりました」。2人が見たビジョン、グッと勝利を“確信”した瞬間に迫っていく。
今シーズン2度目の登板。毎回のように走者を許すが、得点は与えない。自身の失策も絡んだが、西武打線を相手にゼロを並べていった。4点のリードをもらいながら、5回を迎える。安打と、山川穂高内野手の失策で1死一、二塁となった。ここで海野がマウンドへ。交わした言葉は多くなかったが、長谷川を三ゴロ併殺に打ち取った。
カウント2ボール2ストライクからの5球目。上沢は3度首を振り、ラストボールに選んだのはスプリットだった。三塁・廣瀬隆太内野手が打球をさばき、相手に流れを渡さなかったシーン。チームの状況まで背負い、海野はサインを出していた。
「ゲッツーを取ることができて、一番いい流れを持って来られると思っていました。ここ最近の試合はミスとか、ポテンヒットもあった中で、あそこをゼロで切り抜けるのは絶対だと思っていたので。上沢さんにも『取りましょう』って言いました。たまっていたランナーも、エラーがあったわけですから、嫌な流れは確かにありましたけど。ここをゼロで仕留めたら『きょうはいける』と自分でも思っていました」
4点リードの状況ではあったが、試合前の時点でチームは1勝6敗。1つではなく、一気に2つのアウトを奪うことが必要だと感じた。5球目の前、3度首を振った上沢。スプリットという選択は「海野の中では、それが確率が高いと思ったんじゃないですか」と、捕手側の決断だったと明かす。海野は「いろいろと戦術を使っています」と多くを語らなかったが、自らの選択と度胸でチームを勝たせたのは確かだ。
初回も1球目から4球連続で変化球…絶対に避けたい「同じこと」
立ち上がりから、慎重さが目立った。初回、上沢は1球目から4球連続で変化球。スライダーとフォークを駆使しながら追い込み、先頭打者の長谷川を直球で三直に仕留めた。「真っすぐで抑えられたらベストですけど、チームの状況も状況なので。真っすぐでホームランを打たれたりしたら、それこそ同じことになってしまう」。プレーボール直後から、絶対に流れを渡してはいけない。昨シーズンは1軍で51試合に出場。積み上げた経験を表現しようとすると、海野は自ら、甲斐拓也捕手の名前を挙げた。
「今は我慢する時だと思います。去年も拓さんからは『キャッチャーは我慢することが大事だと言われ続けてきましたし、そういう時なのかなと」
上沢と海野は、2試合連続でバッテリーを組んだ。上沢が「ほしいところでほしい打球を打たせることができたので、よかったです。しっかりといいボールをチョイスしてくれたおかげ」と頭を下げれば、海野は「投げミスも少ないですし、ピンチになってもきっちりと要求した球を投げてくれました」と頷いた。力を合わせて掴んだ1勝目。これから何度も何度も手にしていきたい。
チームとしては、シーズン2つ目の白星となった。1つ勝つことは、簡単ではない。海野は表情を変えることなく「目の前の試合をやっていくこと。自分の中ではカード勝ち越しが大事だと思う。頭を全力で取りに行くのを考えています」と語った。あと135試合。ホークスにとっても、捕手陣にとっても、長い戦いが続いていく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)