ファームで共に汗を流したかつての戦友も、目の前のマウンドに立てば“敵”だった。自らの立場を考えれば、負けるわけにはいかなかった。「正捕手を取らないといけないので」。18日にみずほPayPayドームで行われた中日とのオープン戦。マルチ安打を放った谷川原健太捕手は覚悟を滲ませた。
「『よろしくお願いします』と言ってきたので。『支配下いけそう?』みたいな話をして。そのあと、『きょうは俺がボコボコに打ってやるから』といいました(笑)」
昨季、2軍で“捕手修行”を積んでいた谷川原と、ウエスタン・リーグの最優秀防御率に輝いた三浦。何度も話し合い、コミュニケーションを重ねてきたからこそ、対戦でも本気で向き合うことができた。谷川原の発言に三浦も「打たせないです」と闘志を燃やしていた。
迎えた2回1死三塁の第1打席。3球目の甘く入ったスライダーを見逃さなかった。昨季何度もミットに収めたボール。「ずっと見てきたので。イメージはできましたね」。中前に弾き返す適時打となった。対する三浦も負けていられない。4回1死二塁の第2打席は二ゴロに抑えた。2人の対戦は“1勝1敗”だった。
“横一線”の勝負だった正捕手争いもいよいよ佳境を迎えている。海野隆司、嶺井博希、渡邉陸らがライバルとなる中、谷川原は2戦連続マルチと持ち味の打力も本領を発揮。「ちょっとずついい感じになってきたのかなと思います」と手応えも感じている。
支配下登録と正捕手。目指すものは違えど、ポジションを奪っていくことに変わりはない。「あいつも支配下を狙って、枠を掴みに行こうとしていましたけど、僕も正捕手を取らないといけないので。そこは負けられないなって気持ちでいました」。ユニホームの色を変えて戦う後輩を目の当たりにし、刺激を受けたのは間違いない。