昨シーズンは26試合に登板して14勝7敗、防御率2.36。最多勝のタイトルを獲得するなど、先発ローテーションの中心としてリーグ優勝に貢献した。日本シリーズを終えると、首脳陣から今季の開幕投手を託された。2年連続の大役で「(2月の春季キャンプでは)S組にもしていただいたので、最初から最後まで離脱せずにいくのが目標です。そこだけを考えて練習しています」と話す。
周囲からの期待も、過去2年に比べれば大きくなっているはず。一身に背負い、マウンドに立つ右腕。間違いなくチームの勝利に貢献した昨シーズンだからこそ、最後の1敗が記憶に刻まれている。
「それは去年からいいところ、節目で投げさせてもらっている。最後にああいう形で勝ち切れなかったところは僕自身の力のなさでもある。またあそこにたどり着けるように。大事なところを任せてもらって、しっかりと勝てるようにと思ってオフシーズンを過ごしてきたので、その結果を出していきたいです」
DeNAとの日本シリーズ。2勝3敗で迎えた第6戦で自身の出番がきたが、3回4失点で敗戦投手になった。自分が登板した試合で日本一を決められたことで、頂点への思いはさらに強くなった。
クールな表情の一方で、ピンチを抑えれば雄叫びを上げる。そんな有原の姿を、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「誰が見てもダントツでしょう」と表現。“気持ちの強さ”は、チームの中でも群を抜いている。本人は「別にこの試合で負けたから、とか印象に残っているものはないですけどね」と言いつつ、自身の“ルーツ”を明かした。
「学生時代からそうでした。投げる時は抑えたい、勝ちたいって気持ちはずっと持ってきました。プロに入って、特に変わったというのはあまりないかなと思いますね。もともと、投げる時はそういうタイプかなと自分では思っています。マウンドに上がればスイッチが入るというか、そういうものは僕の中ではあるのかなと思います」
1球の重みを知った経験もある。広島・広陵高時代、3年夏に甲子園出場。初戦で激突したのは、福島・聖光学院高だった。後に阪神から2位指名を受ける歳内宏明投手との投げ合いは、スコアが動かないまま終盤へ。7回のピンチ、先制点を許したのは有原の暴投だった。そのまま、0-1で敗戦。高校野球が終わった瞬間だった。15年前の一敗は、自分にどんな影響を与えたのか。
「あれも一生懸命にやった結果なので。あそこで力が入って、ワンバウンドを投げてしまったのは勉強になりました。もちろん勝ちたかったですけどね。全てはいい勉強で、少しずつ成長できているかなとは思います。投げる時は、どの試合もそういう気持ちは持っていますから。あまり意識しているという感じではないかもしれないです」
早大を経て、2014年ドラフト1位で日本ハムに入団した。バッターに向かっていく気持ちは、プロ15年目になった今も熱く抱いている。「みんなそう思っているでしょう」と笑いながらも「大事な部分だと思います。投手が動揺していたら、相手も絶対に感じること。そういうところで優位に立たれるのは非常にもったいないことです。投手は自分でコントロールができるので、常にできることを意識しています」。マウンドでは、全てが見られている。立ち振る舞い1つにもこだわり、今の有原が作られてきた。
ホークス3年目。エースという肩書きが、誰よりもふさわしい存在だろう。「それは全然思っていないです。好きに書いてください」と謙遜する。「人それぞれあると思います。僕はチームに貢献して優勝、日本一になることしか考えていないので。とにかく1イニングでも投げていきたいです」。寡黙な男が、マウンドで見せる一挙手一投足。一瞬たりとも見逃せない。