写真を“撮られる”選手の本音 東浜巨&又吉克樹の一枚がきっかけ…ぶつけた質問

メニューの合間に話しあう東浜巨と又吉克樹(左)【写真:冨田成美】
メニューの合間に話しあう東浜巨と又吉克樹(左)【写真:冨田成美】

鷹フルカメラマンによるコラム…キャンプ初日に見た東浜&又吉の優しい雰囲気

 鷹フルのカメラマン・冨田成美が“撮影者目線”で選手たちの素顔に迫る2025年新企画「鷹フルカメラの撮っておき」(不定期掲載)。第3回は「写真を撮られる選手の気持ち」。グラウンド上では常に報道陣やファンの皆さんのレンズの的になっていますが、被写体として感じることとは――。キャンプインの2月1日、優しい笑みを浮かべていた東浜巨投手を切り取った一枚がきっかけでした。

 慌ただしいキャンプ初日。撮影したい、撮影すべき瞬間が多くあります。S組の選手や新加入、A組の選手……とシャッターを無数に押していきます。様々な表情や動きを無我夢中に収めていた中、突然手が止まる瞬間がありました。

「なんだか素敵な雰囲気だな……」

 東浜投手と又吉克樹投手が、メニューの合間に話しています。ともすれば緊張感が漂うキャンプ初日に、自然体でリラックスした雰囲気が際立ちます。それは、切り取った写真からも伝わってきました。同じ沖縄出身で、同学年の34歳。会話こそ聞こえませんでしたが、笑顔がとても印象的でした。東浜投手は言います。

練習の合間に笑顔を見せる東浜巨【写真:冨田成美】
練習の合間に笑顔を見せる東浜巨【写真:冨田成美】

「同級生ですしね。やっぱり沖縄の素でいられます。忖度なく話せますね」

 そんな2人、歩んできたキャリアは対照的です。東浜投手は沖縄尚学高時代に春の選抜で優勝を経験し、亜大をへて2011年のドラフト1位でホークスに入団。又吉投手は西原高時代は無名で、環太平洋大から独立リーグをへて2013年のドラフトで中日の2位指名を勝ち取りました。ある意味“王道”を歩んできた友は、又吉投手とってまぶしく見えてきたそうです。

「僕は、巨が甲子園で投げているのを見ていた人間なので、そういう意味でもすごいリスペクトもしています。彼は生え抜きでソフトバンクに入った。僕はあとから来ましたけど、うまいことチームに馴染めるようにやってくれたのも巨だったので、すごく感謝しています。お互いまだまだやれると思っているので、そこを2人で高めていけたら。せっかく沖縄出身でこれだけチームに一緒にいるので、2人で日本一になった時にそこで投げたいなっていうのはありますね」

 2021年オフに国内FA権を行使して中日から加入。東浜投手が憧れから、ともに戦うチームメートへと変わり、より関係性も深くなりました。一緒に食事をする機会も増えたようで、東浜投手は「“なまり”は、ご飯や飲みに行ったりしたら出ます。又吉はあんまり出ないですけど、僕はもうがっつり出るんですよね」と照れ笑い。グラスをぶつける時は必ず「カリー!(沖縄の方言で乾杯)」だそう。

 ほっこりする笑顔のワンシーンをきっかけに、より深く知ることができた特別な関係性。とはいえ、被写体になっている2人はあくまで無意識の一コマ。ふと、“撮られる側”の思いが知りたくなり、こう質問をぶつけてみた。

「私たちカメラマンが撮影する時に、意識してほしいことはありますか?」

 東浜投手は「ピッチャーは結構、投げる瞬間とか変な顔が多いじゃないですか。記事とかもそうですけど、ちょっと恥ずかしいです」と本音も。とはいえ、選手たちはどうすることもできないのもわかった上で、「それもまた、撮る人の自由なので。お好きにどうぞって感じですね」と笑顔でさらり。撮る側への敬意を表すところが、やはり実直です。

 又吉投手にも同じ質問をしてみました。「僕は、なんでもいいですけどね。あんまり気にしたくないので。もうみんな撮った方がいいんじゃないですか」とさらり。“撮られる=注目されている”の証拠。「だってプロ野球の世界にいて、何回その写真を撮ってもらえるか分からない。『お前、(現役)終わったら撮られんくなるぞ』と(自分に対しても)思っていますから。いくらでも撮ってあげてください」と愛のある回答でした。

 撮る方の狙いだけでなく、撮られる選手の思い、そして切り取られた写真を見るファンの皆さんの思い。これまで以上に一瞬を大切に撮影し、1枚でも多くの宝を残していきたいです。

(冨田成美 / Narumi Tomita)