36盗塁でタイトルを獲得した2023年オフは500万円アップにとどまっていた
本人の想像も超える大幅昇給だった。なぜ一気に“大台”を突破することができたのか?
ソフトバンクの周東佑京内野手が27日、みずほPayPayドームの球団事務所で契約更改交渉に臨み、6500万円増の1億1000万円(でサインした。「金額の増減はいかがでしたか」――。会見冒頭で減額の可能性も含めた問いを受けると、「減らないでしょ、絶対」と満面の笑みで答えた。「最大限の評価をしていただいたなと思います。『1年間頑張ってくれた』と言ってもらいました」と、納得して来季に挑むことになった。(金額は全て推定)
選手会長に就任した2024年。開幕スタメンの座を射止めると、123試合に出場して打率.269、2本塁打、26打点、41盗塁をマーク。2年連続3度目の盗塁王に加えてゴールデン・グラブ賞、ベストナインを初受賞した。規定打席の到達も初めてで、115安打を記録。「満足はしていないですし、改善点はある。良くも悪くも僕っぽい成績かなと思います」。苦笑いしたが、充実のシーズンを過ごしたのは確かだ。
2023年も36盗塁でタイトルを獲得したが、そのオフは500万円アップの4500万円でサインした。今季の査定と比較して、どこに違いがあったのか。本人と、三笠杉彦GMの言葉から紐解いていく。
周東自身も、大幅昇給は「予想以上でした。(1億に)届かないくらいだと思っていました」と素直に認めた。球団からの評価を感じた部分についても「守備、走塁です。あとは1年間、試合に出られたところが一番だと思います」と分析する。2023年の打席数は「268」で、今季は「477」。これまでは代走での出場も多かったが、年間を通してグラウンドに立ち続けることが、査定に大きく反映されると身を持って知った。
「規定(打席)に立てたことが一番大きいです。1年間頑張ったと、胸を張れるところかなと思います。打席に立てて試合に出られていれば、それなりの数字になっていると思うので。それができたら、これくらい上がるんだっていうのは周りの選手も思うのかなと」
1億を超えた提示を見た時の心境は「ありがたいなというか、評価していただいた」と振り返る。2017年育成ドラフト2位で入団して、来季は8年目を迎える。「まだ給料が入っていないのでわからないですけど……。目標にしていた金額ではあるので、よかったと思います。1軍で試合に出るようになってから、その数字が大きな区切りにはなると思っていたので、すごく嬉しいです」。一流の証でもある“大台”を突破したことに笑顔を浮かべた。
球団目線ではどうだろうか。三笠GMが具体的な評価ポイントに挙げたのは、打撃面の成長だった。
「走攻守で活躍をしてくれた中で、やはりバッティングのところ。スタメンで使うところにまで上がってきたのが大きいんじゃないかと思います。もともと、守備と走塁は日本を代表する選手だった。打撃面でずっと起用していると難しいところがあるというのが去年までの課題でしたけど、そこが良くなってきたというのが持ち味の守備走塁に繋がっていたと思います」
査定という視点からも、規定打席は「1つのバー」と表現する。到達するか、しないかで大きく変わってくるラインだ。41盗塁でタイトルを獲得したことに加え、「あとはゴールデン・グラブ賞も獲りましたけど、守備の貢献もとても大きいところがありました」。まさに走攻守の全てでチームに貢献したことが、6500万円アップという金額に表れた。
11月9日には左膝手術を受けたことが球団から発表された。周東にとって、痛みを抱えながらも戦い続けたシーズン。さまざまな人の協力でグラウンドに立つことができたからこそ、この昇給にも繋がった。感謝を伝えたいのは、1人や2人ではおさまらなかった。
「毎日状態を見てくれたトレーナーさんもそうですし、試合に出るか出ないか決めてくれた(小久保裕紀)監督もそうです。色々と気を遣ってくれた妻も。誰にというよりも、全員の協力があって、1年間試合に出られました。最後“爆発”しなくて終わったので、みんなに感謝の気持ちを持たないといけないです」
好成績を残せたからこそ、来季が大切になることは誰よりも理解している。「数字というよりも、もう1回しっかりとレギュラーとして試合に出ること。1年間怪我せずにグラウンドに立つことが目標ですし、それができれば数字はついてくると思います」。ようやく果たせた一流選手の仲間入り。球団からの評価も含め、充実のシーズンを過ごしたことが満面の笑みからも伝わってきた。
(竹村岳 / Gaku Takemura)